内側前頭回は「心の理論」に必要なし
他者(や自己)の心的状態を理解・推測できる能力についての研究は,心理学の世界では「心の理論」研究と呼ばれています。
これまでの研究では,PETやfMRIという装置を使って,そういったことをしている時の健常な人の脳活動を調べる(脳機能画像研究)と,内側前頭回・帯状回前部,上側頭溝・側頭頭頂接合部,側頭極といった脳内部位が活動することが知られています。これらの領域がすべて「必要」であるならば,これらの一部にでも脳損傷があれば,「心の理論」を使うような課題を行う時に成績低下が見られる(はず),ということになります。
そこで,Birdら(2004)の研究では,脳梗塞によって内側前頭回に損傷を受けたGTさんに対して,各種「心の理論」課題を施行しました。その結果,ほとんど正常範囲の成績を示しました。つまり,心の理論に内側前頭回は必要ではない,ということをこの結果は示しています。ちなみに,実行(遂行)機能障害やprospective memoryの障害はみられました。
脳機能画像研究の結果と神経心理学的研究の結果にはこのようにギャップが存在します。ある課題を行っている時に使っている(と画像研究で活動が見られる)脳部位は,必ずしも「必要」だということを意味していません。
Brain 127: 914-928, 2004.
Bird CM et al.
The impact of extensive medial frontal lobe damage on 'Theory of Mind' and cognition.
Theory of Mind; mentalizing; medial frontal; anterior cingulate; anterior cerebral artery
Neuropsychological; single case study
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