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24 mai 2004

数のコンセプト,モノのコンセプト

<5>という概念は「5」「ご」「Five」「V」「・・・・・」「トントントントントン(指で机をたたく)」などによって表されます。<5>という概念が脳内に存在して,その概念を表記に対応させることができる(そして逆に表記→概念も)と考えられます。そのような数の概念は意味記憶の一種であると考えられますが,これはモノの概念(これも意味記憶の一種)とどういう関係になっているのでしょうか。

私の机の上に鉛筆が5本ある状況を想定します。
このとき,もし数の概念,モノの概念のいずれか一方のみに障害がみられるならば,図式的に
A) 数の概念×で,物の概念○→「鉛筆があることはわかるが,いくつあるのかわからない」
B) 数の概念○で,物の概念×→「何なのかわからないが,5個あることはわかる」
という結果が想定できます(上の両パターンが存在するならば,二重解離がある,といえます;神経心理学の基本原則)。

いずれも脳の萎縮する疾患である,大脳皮質基底核変性症(CBD)13例と,意味痴呆(SD)15例に対して,
ふたつのアラビア数字の大小比較(どちらの値が大きいですか),数字の足し算,ドット数の多少比較(2枚の紙にそれぞれ複数のドットが描かれているものを見て,どちらの紙のドットが多いか判断),ドットの足し算,物品呼称(物の名前を答える)の5つの課題を実施したところ,
CBDでは,13例中12例で,物品呼称を除く4課題で相対的に成績低下(すなわちAパターン),
SDでは,15例中12例で,物品呼称で相対的に成績低下(Bパターン)がみられた。

MRIで脳萎縮部位を調べると,CBDでは右頭頂皮質を中心とした,SDでは左側頭皮質を中心とした萎縮が認められた。

以上から,同じ意味記憶といっても,
数の概念とモノの概念は別々に存在し,
数の概念は右頭頂皮質に,モノの概念は左側頭皮質に関連が深い
ということが二重解離的に明らかになりました。

より専門的には,CBDにおいて数概念が喪失する,という点が興味深いところです。CBDは失行症(道具を使うことなどが困難になる行為障害)や他人の手徴候(広義の;意図せず手や腕が動いてしまう),皮質性感覚障害(中枢性に,体性感覚や複合感覚に障害)などが出現することが有名で,失行以外の高次脳機能障害は注目されていないので。

Neurology 62: 1163-1169, 2004.
Halpern CH et al.
Dissociation of numbers and objects in corticobasal degeneration and semantic dementia.

Journal's abstract

Neuropsychological, Group, Comparative(CBD=13, SD=15)


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