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18 juin 2004

脳情報のリテラシー、巷の

心脳問題-「脳の世紀」を生き抜く
山本貴光・吉川浩満
朝日出版社

読みました。
アルコールが入ってから書いているので、以下はやや難。あとで消すかも。

世の中に流布される脳神経科学情報に対するリテラシーを、哲学的・社会学的観点から論じる面白い本でした。
「だから」も「じつは」も私は言ってないと思いますが、きっとこれからは意識してしまうことでしょう。

その上での批判的断片的感想。

・純粋なサイエンスとしての脳神経科学は、因果について何も言っていない
 ある心理状態と、脳の活動(もしくは脳の損傷)が、対応している(相関がある)という知見を累積しており、したがって必ずしも「心脳問題」に関わるような議論をしているわけではないし、ましてや決着をつけようとしているわけでもない。そのような対応関係を「重ね描き」と呼べるなら、まさに重ね描きのサイエンスである。

・批判されている対象の限定
 そのような意味で、この本で明に暗に敵視されている、テレビに出ているとか啓蒙書を書いているような科学者や、一般向けの脳科学本を書く高名な海外の科学者(とその翻訳者)や、脳ということばをちりばめているだけの教育書やビジネス書の著者らをのみ批判的に論じているのであって、そういう対象に対してのみ(そしてその手の「本」を読む人々に対してのみ)通用する議論であると思う。
(だから、一般の人向けという点ではこれでよいだろうけど)

・科学はなにも「真理」を追究するという目的にのみ支えられていない
 多数例での平均的な・共通の状態を客観的に「記述する」(それは言葉を用いてとは限らない)作業をしているのであって、個々の人の脳や心の「違い」に興味があるわけではない。個人差は通常、誤差である。
 真理なるものが、その共通部分と個別部分を同時に包括的に説明するようなものであると考えるならば、ほとんどの脳神経科学は真理を追究していないことになる。
 実験心理学的知見が一般には興味を引かず、臨床心理や性格心理が興味を引きやすいのと同じ理由で、平均的・共通的知見が中心にある脳神経科学の知見は一般にはそんなに興味を引かない→(だから)→本来は「つまらない」ものを、興味を引くように「加工」して提示しているに過ぎない。←(じつは)←それは加工者の思いこみか、加工者のサービスか、加工者の戦略であり、いずれも商業的なものである
(研究者たるもの、専門領域に関しては、知の情報交換は「論文」を介してなされるべきであり、本に書かれているようなことは二次的・副次的・参照的・そして商業的意味しかない)

心脳問題というコトバは、もちろん心身問題からきているのでしょうが、どちらかというと脳心(ノーシン)問題と呼ぶ方が私的感覚にはフィットするのですが、いかがなものでしょうか。蛇足ですが。

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Commentaires

何か面白そうな本だと思ったので,つられて買ってみました。
人が進めるものに弱いかもしれないです。
何か最後の方は思いもよらない方向に話が発展してましたね。

哲学者の人はどうしてあんなに問いを立てるんでしょうね。「我々はなぜ『なぜ~』と問うてしまうのか」とか。そこまで問うか,という気がしました。

脳還元主義とかが批判されてましたが,僕個人としては結局,脳を調べていくほか無いなあというところに落ち着いてしまいますね。哲学はあなた(著者)に任せた,という感じでしょうか。
当面は「重ね描き」をやってくしかないみたいです。

色々感想が沸く本でした。(書いたら長く&取り留めなくなりそうなのでやめておきます)

ところでこれどうやったら改行できるんでしょうか??

Rédigé par: kob@kyoto | 20 juin 2004 23:55

つられてって...僕にですか?それは申し訳ない。けど,どこかで教壇に立つような時のネタに使えるかもしれない。哲学者は考えることに存在意義があるわけですから(ついでに,僕と同世代で「意識」しゃちゃうんだけど),こういう本が一冊くらいあってもいいかなとも思うわけです。後半はちょっとなあ。ほんと,はぁそんな見方もアリか,と思いました。ところでこのコメント欄,改行はできないらしいよ。よー知らんけどHTMLタグを埋め込むとかしたらできるのかな?

Rédigé par: Mochi | 21 juin 2004 14:37

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