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22 sept. 2004

総合科目心を考える2-3

Attention!
水曜ですが月曜授業の日。「注意」でした。

前回の続き(地誌的障害および,カテゴリーではない全体処理vs局所処理)の話しをした後に,
注意について。

「注意」自体は日常的に使われる言葉ですが,これを分解することから。
まず,入ってくる情報をすべて処理しているわけではなく,情報の選択と処理をしていることが前提。
・選択的・焦点的注意(何かに注意を向ける),
・注意の分割(いくつかの刺激に並列的に注意を払う)
・持続的注意(注意し続ける)
あわせて心理学的知見のいくつか。カクテルパーティー効果,両耳分離聴。spatial cueingパラダイム,視覚的探索など。

脳ではどうか。
注意に伴って活動が増加する,
刺激の位置によって/手がかりの有無や時間によって/注意の対象によって活動部位が変化する。

注意の障害としては,
外空間への注意の障害としての半側空間無視を,実例を挙げて説明し,「なぜ左側を無視するのか」に関する注意説と表象説を紹介した。
あとは非空間的な注意の障害として,転導性の亢進,固着,配分困難,持続の困難など。


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いかんせん蒸し暑い教室(すでに冷房は効かず)で,
また最初プロジェクターが使えずあたふた(していないように見せる)。
受講しているみなさんも,今回は「(持続的な)注意力が試される」日でしたね。
僕はなんだか注意散漫でした。


出席票は193枚提出され,コメントの記されたものは28枚でした。いくつかピックアップして答えましょう。

>線分末梢→線分抹消ではないでしょうか
#その通りです!抹消は消すこと,末梢は末梢神経などのように,末端の意。


>受験生の注意力を保つには右脳を効率よく刺激する方法を考えればよいのか
#半側空間無視が右半球損傷で起こるから「右脳」が出てきたのかな,よくわからないけれども。
 単純に右脳を刺激するには,左空間に刺激を提示すればよいことになりますが,
 これで注意力が保たれる,とは思えません(というより,受験勉強への注意は逆に低下するだろう)

>心のしくみというよりは,脳のしくみ,生理学に近いなと感じた。もう少し心理学に近い視点からも学んでみたい。
#注意って心の現象なのでは..(力なく反論してみる)。
 あなたのおっしゃる心のしくみとか,心理学に近い視点とはどういうものですか。
 脳の知識なしでも心理学は可能ですが,それと同じように,脳の知識ありでも心理学は可能です。
 今学期のこの授業では後者をしているだけです(このあたりは第1回の授業を復習してみては)

>(右脳が両側の外空間に注意を払っているから右半球の損傷で)半側空間無視が生じる,
 というのは納得できない。右脳は空間能力を持つということを聞いたことがあるが関連があるか。
#結果を説明しうる「理論」としては,そういうのもアリということ。
 「なぜそうなのか」には答えられるものではありません。
 「右脳は空間能力を持つ」というのは,正確には優位性を持つ(=得意)ということですが,たとえば
 これも,どうして右側が優位なのか,その理由はわかりません;そうなっているからとしかいえない。

>半側空間無視の人は,絵をどのように描くか
#右端から中央に向かって描くことが多い,もしくは,(時計の文字盤など)中央から右へ向かって描きます。

>注意はしすぎてもしなさすぎても障害になることがわかった
#そのまとめ方はおもしろいですね。今後使わせていただきます。
 では「良い注意」とはどういうものか,逆に考えてみるとどうなるでしょうか。


半側空間無視の実例が(そして「物体中心」半側空間無視の不思議さも)多くの方の関心をひいたようです。
出席票の「テーマ」にCaution!と書いた方がいましたが,業界用語ではAttentionです。
ではattentionとcautionの違いって,何なのだろう

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