字読めない「失読症」、英語圏と漢字圏で原因部位に差
という記事が読売新聞のオンライン版に掲載されてました。
ついでに,私のこのblog,「中前頭回」で検索してやってこられた方もいました
(最初にこちらを知ったので,なんで中前頭回で検索してるんだろうと思いました)
Natureに掲載された論文です。
Biological abnormality of impaired reading is constrained by culture.という題目で,
それはそれでややセンセーショナルな響き。
しかし,
英語圏と漢字圏(この言い方は正確ではなく,アルファベットと漢字とでも言うべきか)の違いはすでに知られている
(さらに言えば,かなと漢字の違いも知られている)。僕でさえ知っている。
この論文の著者らは中国の方々だが,日本の研究にまったく触れていないのはなぜだろう。
獲得性失読と,発達性失読を同一視してよいか,という点も考えよう。
おそらく重要なのは,「なぜ左中前頭回(BA9)なのか」という点につきる。
というか,僕が最初に考えたのは,そこだけだったので;
その部分は新聞の記事には書いてなかったので読んでみた。
著者らの解釈では,漢字を読む際には,アルファベットを読む際以上に,音韻性および視空間性のワーキングメモリを使用するからだ,という。この部位の機能低下で失読になる。ふーん。
ちなみに,発達性失読群は,この機能低下を補うように,「左下前頭回(BA45)」の活動が上昇していたという。
わかったような,わからないような。
論文に引用されていてちょっと私の興味をひいたのは,
「中国語を話すアジア人は,英語を話す白人にくらべて,左中前頭回のサイズが大きい」という論文が既にある,とのこと
(漢字を読む→左中前頭回を使う→左中前頭回が大きくなる,ということ)。
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Commentaires
なるほど。
「文化に合わせた治療法の必要性」というくだりは,まあそうなんだろうな,という気がしますが。
日本人は漢字とひらがな使いますから,音韻性と視覚性の使う比率が中間くらいだったりするんですかね。
ところで,先天的に失読症「だから」,ワーキングメモリに関する部位の活動が弱い,という論理は成立しないんですかね。なんだか書いてて混乱してますが。
Rédigé par: kob@kyoto | 02 sept. 2004 17:02
>先天的に失読症「だから」,ワーキングメモリに関する部位の活動が弱い,という論理は成立しないんですかね。
漢字という特殊な読みと,普遍的な感のあるワーキングメモリ,という力関係で,論理的にはワーキングメモリ→失読,という方向性が決められているのかな。
そういった発達性失読(難読)の方々において,音韻性やら視空間性のワーキングメモリ課題の成績が低下している,というデータがあれば,kob氏の論理は解決されるのではないかと(あるのかないのかは知らない)
それから,少し応用的にずらすと,
漢字使用圏の人々は左中前頭回よく使う=大きい
→ ワーキングメモリに秀でている (?)
とかいうことになるんじゃん。
非漢字使用圏で漢字ドリルによって能力(ワーキングメモリ)アップ!!みたいな商売できるかもね...もちろん,冗談ですけど。
Rédigé par: mochi(言語苦手) | 02 sept. 2004 17:15
>発達性失読(難読)の方々において,音韻性やら視空間性のワーキングメモリ課題の成績が低下している,というデータがあれば
それです、それ。そういうことが書きたかったんです(違うかもしれませんが)。
読めない→ある部位を使わない(情報がいかない)→低活性。
勝手に溜飲を下げさせてもらいました。
以下雑多なコメント
・何かワーキングメモリって,鍛えたら強くなりそうな感じありませんか。
・音韻性のWMが低下してるとしたら,話し言葉にも影響でそうですよね。
Rédigé par: kob@kyoto | 02 sept. 2004 18:25
>何かワーキングメモリって,鍛えたら強くなりそうな感じありませんか。
たしかに。僕は視空間性のは弱そう(神経衰弱とか全然ダメ)だから,ドリルが出たら買っちゃうかもしれない。
計算問題のは,買いませんでしたが...
>音韻性のWMが低下してるとしたら,話し言葉にも影響でそうですよね。
お,そうですね。伝導失語の発現機序として提唱されている方々もおられますし(復唱困難とか,接近現象conduite d'approcheとか,その目で見れば,いや,聞けば,そんな風にも考えられるね)。
まったく関係ないけど先日O研の方つくばでお見かけしました。
嫁の迎えに研究所に行ったら被験者で来てらしたとかで。
娘とも遊んでもらえたようで←もうすぐ5歳です
Rédigé par: mochi(鍛えたい,visuospatial) | 02 sept. 2004 19:18