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15 sept. 2004

左手の失行

昨日久しぶりに,失行の検査をする機会がありました。
失行とは,脳損傷の結果,以前はできていた行為(道具を使ったり,バイバイなどの身振りをする)を正しく行えなくなる症状です。

被検査者は,脳梁という,左半球と右半球を連絡する神経線維に変性をきたす疾患の方でした。
このような場合,右手は正常で「左手にのみ」失行を生じる場合があることが,以前より報告されています。

しかし,その障害パターンには2説(2パターン)ある。
(1)言語命令によるパントマイム,たとえば,眼前に金槌が置かれていない状況で,「金槌で釘を打つふりをしてみてください」と指示すると正しくできないが,検査者がその身振りをして,被検査者にマネをしてもらう,あるいは実際に金槌を提示して,使用してもらうとできる
(2)言語命令によるパントマイム,模倣,使用いずれも正しくできない

模式化して以下の通り。
   言語命令-模倣-使用
(1)   ×    ○    ○
(2)   ×    ×    ×

(1)説は,左半球にも右半球にもほぼ等しく行為中枢はあるが,言語に関しては左半球優位のため,
言語命令  左半球言語→(脳梁)×→右半球行為中枢に情報が来ない→左手の失行
模倣・使用 (視覚・体性感覚情報) →右半球行為中枢→失行なし

(2)説は,言語と同様に行為にも左半球優位性を仮定して,
言語命令  左半球言語→左半球行為中枢→(脳梁×)→右半球に情報が来ない→左手の失行
模倣・使用 (視覚・体性感覚情報)→左半球行為中枢→(脳梁×)→右半球に情報が来ない→左手の失行

どちらの説を採っても,右手に関しては
左半球行為中枢→右手,で行為遂行は可能。

それで結果は,(2)説を支持するようなものでした。
ほんとうに,右手には何の問題もなく,
左手を使う場合に,空間的な誤反応(専門的な誤反応分類でいうところの,M,IC,ECO)が多くみられました。
また,左手を使う際には,「言語化」も多くみられました。


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