臨床心理学演習I(学類)2-4
心配が持続するのはどうしてか?
→ 公開しました(2004.10.12)
今日は田坂さんの担当で,
Behav Res Ther 41(2003): 495-503.
Startup HM & Davey GCL.
Inflated responsibility and the use of stop rules for catastrophic worrying.
でした。
この論文を読むのは,先行研究を読まないと難しい。
破局的な"心配"(worrying)は,全般性不安障害に特徴的にみられる。
このような人々にみられる,
心配が次から次へと続くこと,よりネガティブな内容になっていくこと(破局化)はなぜ起こるのか?
(逆に言うと,なぜ「止まらない」のか)
著者ら(2001)による仮説(mood-as-input hypothesis)の概略は,たぶんこんな感じ。
心配性の人はネガティブな気分状態 心配の停止に「厳格なルール」を保持
↓ ↓ ↓
↓ 「自分が心配していることについて,その問題をうまく解決できるか」問い続ける
↓ ↓
問題を解決できていない,なぜならまだネガティブな気分だから(気分を入力情報として利用)
もっと考えることによって("as many as can" stop rule),問題は解決するだろう
↓
もっと考える=心配,が止まらない
# ちなみにこの仮説は,先行研究においてmood-congruency hypothesisに対置されている。
今回の論文では,上記のmood-as-input仮説,および"as many as can"停止ルールと,
「膨張した責任感inflated responsibility」との関連を検討している。
(# inflatedの定訳はあるのだろうか?インフレってことなのだが)
実験1では,特性的な責任感の強さによって,
実験2では,責任感を実験的に操作して,心配のプロセスの持続を測定した。
すべての被験者は事前に,状態気分,心配特性(PSWQ)および責任感質問紙(RQ)に答えた。
両実験に共通して,
心配そのものは,「主要な心配」群(本人の気がかりなことを心配させる)と,
「仮説的な心配」群(「あなたが自由の女神だったら,という状況設定で心配させる)がある。
↓ あなたが自由の女神だったら何が心配ですか (実験者)
「頭の周りを大勢の人が歩いていること」 (被験者)
↓ それの何が心配ですか
「重さに耐えきれず,崩れ落ちそう」
↓ それの何が心配ですか
などなどと,
被験者が「もうおしまい」というまで続ける。
この心配の「回数」,心配の持続数を記録する。
実験1の結果。
・心配回数を従属変数とする,特性心配(高・低)×心配トピック(主要・仮説)の二要因分散分析で,
→ 特性心配が高いほど心配回数が多い
・責任感質問紙の結果を従属変数とする同様の分析でも,
→ 特性心配が高いほど,責任感を強く感じる
実験2では,気分状態を音楽によって誘導し(ポジティブ・ニュートラル・ネガティブ),
責任感の程度を実験的に操作した(高責任・低責任)。
結果。
・気分状態の主効果 → ネガティブ気分で心配回数多い
責任感×気分の交互作用有意
→ ネガティブ気分では,高責任感条件で心配回数多い
ポジティブ気分では,低責任感条件で心配回数多い
結論?
たしかに,膨張した責任感と心配の持続は関連があるが,
心配特性が高い人→膨張した責任感→心配持続 (実験1),
ダイレクトではないかもしれない,気分状態に左右されるから。
(つまり責任感×ネガティブ気分,が心配を持続させる)。
膨張した責任感→心配持続 (実験2)
↑促進
ネガティブ気分
###
・読解が,やっかい。
・ポジティブ気分では低責任感条件で心配の回数が増えた。これは"feel like continuing"ルールと
名付けられている。
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