心理学方法論-3
面接法(続)
・「定番の」非構造化面接・半構造化面接・構造化面接
事例研究法
・事例報告と事例研究の違い
個性記述的に行くか,モデル生成的に行くか
・事例研究がeffectiveなのはどういうときか
・「質的研究」(かならずしも「事例研究」で使われるわけではないが)
・一事例実験
「続き」の後半は,事例研究というコトバからの連想的解説。
...というわけで,
来週は休講です。
試験にそなえて,よく復習しておいてください;
心理学主専攻の学生にとっては,必修科目ですから。
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以下,連想的解説。授業で熱く語らなかった部分。
『一事例の実験デザイン:ケーススタディの基本と応用』
(D.H.バーロー&M.ハーセン著,高木俊一郎・佐久間徹監訳,二瓶社)
という書籍の1ページ目に,
こういった事例研究を応用的に行った最初の人は,Brocaだ,との記述がある(へぇ~×10)。
年代は1861年とある。
Brocaという人は,ブローカ失語を見いだした人で(というか,だからブローカ失語と呼ばれているわけ)
神経心理学研究のスタートあたりに位置づけられる,その道では有名な歴史的人物です。
心理学,生理学の科学的研究,最初の実験は,単一個体についてであり,
その応用的研究のはじめは,神経心理学的なものだったということなのです。
私の専門とする神経心理学業界では,その伝統の故か,
「事例研究」(「症例研究」の方が適切な言い回し)を大変重視している。
いまでも,それこそ伝説的なケースというのがあって,
それなりにこの学問分野を知っているなら,何ケースかは頭に入っているだろう。
(ちなみに,Brocaの症例は「タン」と呼ばれている;発話が「タン」だけだったので)
そして,現在でも,「神経心理学会」とか「高次脳機能障害学会」といった学会に出席すれば,
その半数以上が1例~少数例の「症例報告」となっている。
しかしながら当然この事態への反動はあって,「グループスタディ」重視の立場も存在し,
(たとえば右半球損傷群 対 左半球損傷群,とか,前頭葉損傷群 対 非前頭葉損傷群,とか)
その場合には,推測統計学的分析に耐えるだけの症例数=Nが求められることになる。
どちらがより適切な研究方法なのか,今だに業界内でも論争があるところ。
「事例研究がいいのか/でいいのか,グループスタディがいいのか/でいいのか」。
さらに
一般的な心理学的思考法に慣れたフツーな心理学者/学徒からは,
「それはどれくらい一般化して言えるのですか」
といった質問を受けることになる(少なくとも自分は何度も聞かれた)。
おそらく最も有効で妥当な理論武装としては,折衷的だけれど,「累積的事例研究」ということになるだろうか。
(要するに,個々の事例研究を十分に行う→そういった事例研究を(複数事例で)積み上げていく)
ちょうど,法曹界において,「判例」が蓄積されるように。
このため当然「まず症例ありき」の研究スタイルということになる。
ゆえに
なんらかの結果が得られるかどうかについては,
研究者側の主体性やらオリジナリティやらが本質的に発揮されにくい業界だといえるでしょう。
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