収集行動の神経基盤
「収集行動」の神経基盤。
A neural basis for collecting behaviour in humans.
Brain 128: 201-212, 2005.
Anderson SW, Damasio H, and Damasio AR.
「かなりの量の」,
「ほとんど,全く価値のないモノを」,
「通常の生活に支障が出るほど」収集する行動が,
「脳損傷後に」出現し,
「1年以上みられ,周囲がやめさせようとしてもできない」。
といった状態を,「異常な収集行動」と定義した上で,63例の脳損傷患者さんで検討した。
このうち,9例は上の5つの定義すべてにあてはまり(収集群),54例はあてはまらなかった(非収集群)。
群間で神経心理学的検査の結果を比較すると,
知能,遂行機能,前向性の記憶成績に有意差は認められなかった。
(傾向としては,「収集群」の方が遂行機能成績は良好,記憶成績は不良)
「収集群」は,全例前頭葉に病巣があり,特に内側面と底面に共通して病巣が認められた。
「非収集群」との対比でもっとも顕著な相違が認められたのは,「右前頭葉内側面」であった。
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ヒト以外の動物,鳥類やハムスターなどでも「収集」行動は見られるが,
そしてヒトでも,美的/感情的/金銭的価値を求めて「収集」することはあるが,
ここでの報告は先の定義通り,「異常な収集行動」に関するものである。
これらの場合,ほとんど「収集されたモノ」には関心がなく,
まさに「収集すること」自体に目的があるようだ。
収集行動に駆り立てられる動機を私たちはもともと持っているが(激しく同意),
それを適切に調整する機能が破綻した結果,
「異常な収集行動」が見られるという著者らの解釈。
すなわち,(収集)動機の脱抑制(a disinhibition of the drive)。
(そしてコインの裏側ともいえる「捨てられない」ことも,同じようなメカニズムで説明できる)
OCDにみられるcompulsive hoardingも類似のメカニズムだと考えられる。
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★なかなかうまいタイトルで,少しだまされた感が...
(マニアックなコレクターと,非コレクターをイメージングで検討した,みたいな印象でしょ,この論文タイトル)
★とりあえず,「積ん読」からの脱却にはこれがふさわしいかな,と思って... 第2定義からは,これで外れるでしょう!
★一昔前に,テレビで盛んに「ゴミ屋敷」について報道してましたが,最近見かけないなぁ。
共感的に心理状態を解釈・理解するだけではなく,手伝って片付けてあげるだけでなく,
「脳活動状態の変調の可能性」を視野に入れた援助といったようなことは,可能であろうか。
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