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14 juil. 2005

神経心理学の隠された構造,という論文(かなりマニア向け)

The hidden structure of neuropsychology: text mining of the journal Cortex: 1991--2001.

この業界では「老舗」のCortexという雑誌に掲載された論文と
もういっぽうの老舗であるNeuropsychologiaに掲載された論文
(と,ちょっとだけBrainも)とを
テキストマイニングによって比較し,それらの特徴を明らかにする,という趣旨。
(掲載はCortexなので,主眼は少しCortex側にあるかしら)

なかなかこういう情報も,面白い。
つまみ食いで引用。


★それぞれの雑誌における「多産な著者」(勝手にベスト5に私が編集しました;論文では20人ずつ載っている)

Cortex
  1. Mayes R   (←って誰?)
  2. Carlesimo GA
  2. Heilman KM
  2. Pillon B
  5. Caltagirone C
  5. Dubois B

Neuropsychologia
  1. Hodges JR
  2. Cowey A   (←って誰?)
  2. Grafman KM
  4. Heilman KM
  4. Milner B


★「多産な国」(同;論文では18ヶ国ずつ載っている)

Cortex
  1. UK
  2. Italy
  3. USA
  4. France
  5. Germany
  (のつぎCanadaで,次Japan)

Neuropsychologia
  1. USA
  2. UK
  3. Italy
  4. Canada
  5. Germany
 (のつぎ,France, Australia, Switzerland, Israel, New Zealand, Netherlandsで,次Japan)


★最も引用されている第一著者」(同;論文では20人ずつ載っている)

Cortex
  1. De Renzi E
  2. Warrington EK
  3. Annett M   (←って誰?)
  4. Benton AL
  5. Milner B

Neuropsychologia
  1. Warrington EK
  2. Milner B
  3. Posner MI   (←ってちょっと意外)
  4. Shallice T
  5. Farah MJ


★Cortex10年間の論文をクラスター化する(第1レベルから第3レベルまで)

HANDEDNESS/AWARENESS
   HANDEDNESS
      Lateral Classification
      Lateral Movement
   NEGLECT
      Visual Field Neglect
      Neglect Diagnositics
MEMORY
   SEMANTIC MEMORY
      Verbal/Numerical
      Visual/Spatial
   AMNESIA
      Amnesia Symptoms
      Amnesia Physiology

● 知らない「多産の著者」や「引用されている著者」がいるとは...不勉強(なのか?)

● 神経心理学はイタリアで盛ん
  というのは,この領域をよく知らない人は驚くことだろう。
  Cortexの出版社Massonがイタリアにあるから,というわけではない(Neuropsychologiaでも3位だから)
   ~ 留学するならイタリアへ行く選択肢が→イタリア語を勉強しなくちゃ。

● データに語らせてクラスター化させると,
  「失語」や「言語」はクラスターにならない,というのは興味深い。


とまあ勉強になりました。が,


日本の神経心理学バッシング」(叱咤激励ともとれなくはない)が
Summary&Conclusionsの後半に。

 ...The most significant country representations in
  the samples examined are the strong positive
  showing of the UK, and the weak showing of
  Japan. This latter observation is very different from
  Japan's strong showings in almost all of the high
  tech discipline text mining studies performed by
  the first author, and suggests that Japanese
  scientists have not concentrated their energies in
  the area of neuropsychology.

そりゃそうさ,
研究者(の卵たる大学院生)を養成するような教育・研究・臨床のそろった機関がたいしてないし。
「自分は誰になんと言われようとも神経心理学者です」(医師,言語聴覚士,作業療法士などなどという職種的肩書きよりも!!)というアイデンティティを持った人が日本にいったいどれほどいるんだろうか。

うーん,でもなぁ致命的に自分も反省...論文書かな

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01. BRAIN 【脳】」カテゴリの記事

Commentaires

はじめまして。神経心理学の勉強の参考にさせていただいております。これからもまた覗かせていただきますのでよろしくお願いします。
>> Cowey A   (←って誰?)
OxfordのAlan Coweyはnon human primateのlesion studyでvisionについていろいろやった人で(主著はたぶんBrain '97 "Blindsight in man and monkey")、さいきんはhumanのTMSなどをやっているという人なので、神経心理学の範疇からはすこし外れているのかもしれません。
それでは。

Rédigé par: pooneil | 15 juil. 2005 22:02

pooneilさん,コメントありがとうございます。
参考に,だなんて恐縮です。
こちらこそ,pooneilの脳科学論文コメント http://pooneil.sakura.ne.jp/
の内容(はむろん)と形式(「blogにおける専門性とはいかなるものか」)はすごく勉強になります;
というか,blogで論文を紹介するということについては,
pooneilさんのところからの影響を受けて始めたところ大,です。

Cowey Aについての情報もありがとうございます。
feeling-of-knowingにのみ基づいて「って誰?」にしてしまったものですから(笑)
補っていただいて感謝です。

このページにリンク貼らせていただきました。

Rédigé par: m0ch1 | 16 juil. 2005 07:49

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