筑波大学・人間学類・心理学主専攻・説明
任務終了しました。
650弱くらいの「生徒さん」たち,その保護者の方々がおいでになりました。
以下は,その時の原稿全文です。お約束通り,ご参考までにアップしておきます。
長文ゆえ,興味がなければ 続きを読む を押さないように。
「卒業後の進路」については,就職委員会委員長がご説明したので
私の番では省略しました。
~それでも10分強。わおー。
時間感覚に狂いが生じているようです。
心理学主専攻の説明(Ver.2最終)
★1.心理学とは★ → 関連記事
※ 学類案内を使って説明します。 10ページ・11ページを見てください。
■ 心の理(ことわり)・心のしくみ・心の働きに関する科学的な学問体系 です。
■ 心理学の目標
心を理解する ことです。
理解するとは,「なぜ・どのように」を「説明できる」ということです。
ではどのように?大きく言うとふたつあって,
ひとつは「原則・法則を見出し,理論化する」ことです。
一般に,平均的に,ふつうの人はこうするとか,すべての人に共通する(であろう)部分に焦点を当てることです。
もうひとつは「個の理解,個人差をとらえる」ことです。
あの人とこの人の,学力や知能や性格やものの考え方・とらえ方がどのように違うのか,その違いが生まれるのはなぜなのかを明らかにすることです。
■ さまざまな対象・切り口・方法
心のしくみそのものを明らかにしようという純粋な基礎学問的側面と,
心のしくみについて知られていることを活かして,人々のより良い生活に貢献しようとする応用学問的側面があります。
そのバランスは研究領域や研究者によってさまざまです。
また,何を対象とするか,どのような切り口で研究するかもさまざまです
(アメリカの心理学会では53の専門部会(「部活動」とお考えください),イギリスでは10,日本では...日本心理学会の大会でのカテゴリーは18)
→ つまり 心に関係する(と思われること)森羅万象が,心理学の研究対象になりえます。
■ 心理学を学ぶ場所の「わかりにくさ」(国公立では)
現在日本の国公立大学には「心理学部」はおろか「心理学科」も存在しません
(ところが私立大学では,「心理」のつく学部が7,学科は107もあります)。
文・人文・人間・行動・教育・社会といった学部・学科の下の専攻やコースとして(また大学によっては分散して)存在しています
が,私立大学においては,近年の心理学人気に後押しされ徐々に独立し,集合されつつあるというのが現状です。
★2.心理学主専攻について★
そんな国公立大学の中にあって,心理学主専攻はかなり「わかりやすい」「見えやすい」組織であると思います。
■ 担当教員の数
心理学主専攻は,「一組織に多数の,そして多様な領域にわたる」教員を配置しております。
今日現在で,学類を担当する教員は25名です。
規模的には他大学の「心理学部」あるいはそれ以上に相当するといってよいと思います。
これが,第一の特徴です。
■ 5領域
本学の心理学主専攻では,下にあります実験,教育,発達,社会,臨床の5つの領域を設けています。
領域は,皆さんの学習カリキュラムに一定の条件を与え,また教員のグループを指してもいます。
簡単に説明すると,
実験心理学領域は(ラットやマウスなどの動物を含む)生体の基本的心理過程の実験的研究,
教育心理学領域は,認知・記憶・言語などの知的活動に関する基礎的研究や,教育場面における教え・学びへの応用,
発達心理学領域は誕生から老年までの人間発達,
社会心理学領域は,個人・集団・産業組織などにおける人間の社会的行動の一般原則や社会現象の解明,
臨床心理学領域は,心理的適応や不適応,心理的健康や不健康,心理療法や心理診断の基礎的研究です。
しかし,これら5つの領域のいずれかにはおさまらないテーマというのもあって,
たとえば,「感情」とか「意欲」,「ストレス」,「対人関係」,「イメージ」などです。
■ 科目の豊富さ
このように心理学の広い範囲をカバーしていることから,
第二の特徴として,
豊富な科目が用意され,さまざまな心理学領域を広く全般的に学ぶ機会が与えられるということです。
今年度開講されている,必修を除く選択「専門科目」は講義16,演習13,実習5となっています。これらがほぼ,「通年」の形態で設定されています。
■ カリキュラムの緻密さ
第三の特徴として,
卒業研究までのカリキュラムが綿密に設計されており,
心理学の専門的な学習が段階を追って着実に進むようになっているという点があります。
■ 例年,50数名の学生が心理学主専攻に進んできます。
★3.カリキュラム★
※ 学類案内の6ページ・7ページです。
■ 2年次になり,心理学主専攻に進むと,より専門的な学習が始まります。
■ 専門的な学習とは
これまでに研究されてわかっていることに関する「知識を得る」ことと,
これから新しい「知識を産み出す」ための方法を学ぶ,この2つです。
■ 知識を得る
基礎的な知識は,学類共通の専門基礎科目,1年次の「心理学Ⅰ・Ⅱ」で学習しますが,
より専門的な知識を得るために,専門科目として「○○心理学」といった講義を受けることになります。
5つの領域から,それぞれ1科目以上受講し単位を得なくてはなりません。
2・3年次に履修します。
■知識を産み出す
新しい知識を産み出すために,その方法を頭と身体で身につけます。
研究方法に関する講義の「心理学方法論」(2年次),また実験や調査の仕方,レポートの書き方を体験的に学ぶ「人間研究の方法(心理学)」(2年次)や,「心理学研究法」(3年次)などが設定されています。これらは最終的に「卒業研究」(4年次)へとつながります。
特に,「心理学研究法」は,主として大学院生のインストラクターについて実験や調査を行い,その結果をまとめて発表する,という作業を行う,プレ卒論的な科目です。1年を前期・後期に分け,5領域のうちから2領域を選択します。この「心理学研究法」によって,卒業研究を自ら行える力を養成します。
以上すべて必修です。
■ 共通なツール
知識を得ること,知識を産み出すことに共通する「ツール」としては,
「統計」と「英語」があります。
「心理統計」,「心理統計実習」,「心理学英書講読」があります。
これらも必修で,2年次に履修します。
■ 演習
(ここには記されていませんが)各領域に複数の演習が用意されています。
担当者によって実施形態は異なりますが,もっとも多いスタイルは,研究論文,それも英語で書かれた論文を読み,その内容や方法について受講生が報告し,その後教員と受講生全員がディスカッションする,というものです。
演習も,知識を得ること・知識を産み出すことの両者に関わる科目です。
5領域のうちから2領域以上の演習を受講し単位を得なくてはなりません。
3・4年次に履修します。
■ 卒業研究
全員卒業論文を書くことになります。
希望するテーマなどに基づいて指導教員を決定します。
その指導の下,実験や調査などを計画してデータを取り,結果を分析して書き上げます。
4.☆卒業後の進路☆
※ 学類案内の18ページ・19ページです。
■ 就職
企業・団体,公務員,教員ともあります(教員は少なめです)。
特に公務員は,少年鑑別所や家庭裁判所など,心理学を活かせる職業に就く場合もあります(がしかし,なかなか厳しい道のりです)。
■ 進学
将来,大学教員・研究者,あるいは心理学関連の資格を得て働くことを目指す場合には,大学院入試を受け合格し,大学院へ進学することになります。
近年特に関心の高い「臨床心理士」になるためには,
(現在)全国に136ある指定校のいずれか,または専門職大学院における修士課程
を修了しなくては受験資格が得られないので,この職種を目指す人は必須です。
■ 最新情報
この3月に卒業した学生(2004年度)の進路状況:
企業・団体40%,公務員4%,教員2%,進学47%,その他6%
(2004年度)の大学院進学状況:
教育研究科(修士)15%,人間総合科学研究科(博士)35%,本学他研究科(博士・修士)0%,他大学大学院50%
★5.最後に★
■ ズレはないか?
みなさんが持っているであろう心理学イメージと,大学で学ぶ心理学は微妙にずれている(ことが多い)。
みなさんの大事な将来を方向付ける「大学入試」「進路選択」なのですから,
できる限り情報収集をして進路選択・受験してほしい。
■ 大学テキストレベルの「心理学」入門・概論
海保博之先生の「心理学ってどんなもの」(岩波ジュニア新書)や,
松井豊先生の「高校生のための心理学」(大日本図書・NEW心理学ブックス)をぜひ。
■ 「心を理解したい」,学びたい,研究したい,役立てたい皆様,ぜひ入学してきてください。
以上
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Commentaires
補足:
★1.心理学とは★
■ さまざまな対象・切り口・方法
日本では...
のところ,日本心理学諸学会連合
の団体を数える,という手があった。
41団体だそうな
(杉山尚子『行動分析学入門』から)
Rédigé par: m0ch1 | 20 sept. 2005 22:14