確定申告・計算障害・「円」の付加
これまた恒例行事の確定申告。
さきほど申告書を郵送し,
申告所得税を納付し終了。
給与が複数箇所から支払われており,
わずかながらの印税と
わずかながらの講師料。
税理士を雇わねばならぬほどフクザツではない。
国税庁のwebページにある「申告書作成コーナー」を利用して,申告書作成作業は15分ほどで終了。
しかし,ここで割と重度なプリンタトラブルに見舞われ
(卒論印刷中に高い頻度で生じるプリンタトラブルの如く)
30分以上時間のロス。
郵便局で,
捺印して貼り付けて封筒に入れて近場の税務署の住所と名称を書き加えて出す。
隣の窓口で税金を納付する
(ひとつの窓口でできたらいいのですが)
*
内田樹先生の「慟哭の確定申告」
(韻を踏むわけですな)ではないが。
「下書き用」に下書きした,私の手による手計算は,
申告額が心外にも過大になるような過誤がありました。
ありがとう国税庁さん,作成コーナーを作成してくれて。
あやうく国家の歳入に必要以上に貢献してしまうところでした。
*
ところでその,
数学的能力・計算能力・計数能力・計量的知性・数学的知性・数学的論理で思考する・
数学的な頭・算数的なこと
などなどと表記されている,一般にいう「数字に強い」「数学的」ということですが,
これはガードナーの多重知性論の「論理・数学的知性」のように一括してよいものか。
*
神経心理学で「計算が苦手」な計算障害は,以下のように分類される。
分類される,ということは,
これらのひとつひとつが独立して=その点だけに限定されて障害が起こりうる
ことを示しており,
さらに,
それらが別々の心的機能であることを示唆する わけです。
1) 数処理の障害
数の読み書き障害。数字そのものだったり,ケタを誤ったり。
2) 一次性失算
2-1) 算数的事実(arithmetic fact)の障害
1の位どおしの足し算や引き算,九九などは「それそのもの」として
覚えているもの,それが算数的事実。それを忘れると計算が非常に困難。
2-2) 計算手続きの障害
繰り上がり・繰り下がりなどの概念に問題。
2-3) 演算記号の認知障害
記号の理解障害。
2-4) 算術的概念の障害
公式的なことがら(m×n=n×mなど)の理解の障害。
3) 二次性失算
3-1) 失語症に伴う失算
3-2) 視空間性失算
3-3) 全般的注意力低下や知能低下に伴う失算
(田川皓一編『神経心理学評価ハンドブック』・第19章計算障害の評価(松田実)による)
以上をふまえると,
> 養老孟司先生によると、私は数学的な論理で思考する人間だそうである。
> あまりに数学的な頭のつくりになっているせいで、 ...A
> 算数的なことができない ...B
> ということがあるいはありうるのだろうか? ...C
> ありえない。
Aを算術的概念,Bを算数的事実 and/or 計算手続き ととらえられれば,
Aに優れていることがBの弱さの原因である,ということはたしかに正しくないが,
AとBは関連があるはずだ,という暗黙の前提も正しくない。
AとBは独立して存在しうる(相関もなければ因果もない)。
したがって,
AかつBという事態(C)は ありうる。
足し算や四則演算が苦手であっても,
「算術的概念」がしっかりしていたり,
「かっちりした論理的思考」を数学的論理的思考と呼んでいるならば,
それはベツモノですから,秀でていることは,ありえます。
幾何学的なことがら,空間的な知性は,これまたベツモノでしょう。
*
> 私の場合、数字に「円」が付くと計算能力がさらに低下する。
この点には同意。
お金への執着はどちらかというと私の場合はない,というか,ルーズというか...
しかしながら,
「円」という記号が付くことによって,
単なる数字だけでは存在しない,付加的な意味が生じ,
そのためになんらかの情動的処理が,
計算に要する心的機能のリソース配分を阻害するんだろう。
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Commentaires
内田先生のブログ,その後見ました?
「さよならレクサス」
「レクサス」の新車が買えるほどの税額とは。
それほどお稼ぎなのに銀行からお金を借りて納税とは
(それほどにお金を使われている?とは)。
Rédigé par: m0ch1 | 14 mars 2006 20:05