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28 avr. 2006

学術雑誌購入の危機的状況について公言してみる

大学図書館が他の,たとえば公立の図書館と決定的に違うところは,

(特に海外で刊行される)専門学術雑誌を取りそろえているところだと思うのです。
しかしこれが,非常に危機的な状況
(きっとどこの大学図書館もそうだろう)。

専門学術雑誌を読まない研究者なんて研究者とは呼べないと思うわけで,
雑誌の質・量両面の充実は,大学の根幹的な知的インフラだと考えられます。
その雑誌購読を止めるというのは,
「電気・ガス・水道を止められる」のに等しいことと言えるんじゃないかと思うのですが。

背景として。
なぜ危機的か。
 1.学術雑誌の購読をするかしないかを決定するのは,
   その専門的な価値の分かる小さい「部局」である。
 2.その「部局」が購読にかかる経費を負担している。
 3.昨今,大学の総収入は減少しており(文科省もさらに毎年1%ずつ減らすと言っている),
   当然,各部局,さらには各教員に配分される研究費の額も減少している。
 4.その一方で,雑誌の価格は毎年上昇している。
 5.さらに,公的に海外の雑誌を購入して図書館に入れるときには,「機関購読」という形式で
   購入する必要があり,個人で私的に購入する「個人購読」に比べて価格が
   ベラボーに,と言えるほど,高いのが一般的。
 6.電子ジャーナルという仕組みがあり,それをパッケージで購入すると
   冊子体ではなくpdfでダウンロードできる,必ずしも冊子体購読していないものもOK
   というメリットがあるものの,
   デメリットというか,
   このパッケージ自体の価格が毎年うなぎ登りで,かつ,このパッケージに絡むような
   冊子体での購読を減らすと,パッケージ全体の価格が上昇するような仕組みになっている,
   らしい(つまり,電子ジャーナルOKにしたら冊子体はいらない,とは簡単にはいかないらしい)。
 7.冊子体はモノですから,有限な図書館スペースを物理的に毎年一定のペースで必ず圧迫する。
   し,もうかなり空きスペースがなくなってきているようで。

話としては簡単で,
・雑誌の価格は上がることはあっても下がらない,
・部局としては今も金がなく,今後さらに減っていくだろう,
 かといって購読を安易にやめるわけにいかないばかりか,「シバリのある」雑誌もある,
・図書館としても,購読を「中止しないでほしい」と「中止してほしい」のアンビバレンスがある。

 *

「図書」購入をもっと絞ったりすればいいのに。
分野特性もあり,一筋縄ではいかないらしい。

開架図書の充実は,目に見えるこの図書館の特徴でもあり。

 *

2007年1月以降の購入雑誌を,今年5月には決定する必要があるため,
その「小さい部局」で継続・新規・中止を検討する会議が昨日開かれて
(私はメンバーではない),結果を教えてもらいました。

唖然。

まず,至上命題として「雑誌購読にかかる総経費をどうしてもかなり縮減しなければならない」がある。
条件として,シバリのある雑誌(ScienceDirectとかSpringerLINKとかSynergyとか)は中止できない。
そこで,
そういった大手出版社系ではない雑誌が槍玉に挙がることになる。
各領域の代表者が集まって「これをやめられると死活問題」とか議論するわけだから,
相対的にGENERALなテーマを扱う雑誌とか,REVIEW系雑誌とかの「やめないでくれ」度が低い。
和雑誌はあえて機関購読しなくても,特に学会誌などは誰かは持ってるだろう,と。

そんな調子であっけないほどまでにあれこれ減らすという原案ができたようです。

和雑誌(日本語で書かれた雑誌)→かなり淘汰。
でも,もともとの価格も安いからあまり「総額の圧縮には貢献しない」。

ゆえに,
洋雑誌も。
APA系の雑誌はのきなみ削減候補にあがっていた。
Psychological ReviewとかPsychological Bulletinとか...review系は弱いね,こういうときに。
Journal of Personality and Social Psychologyとか,
Journal of Abnormal Psychologyとか,
Behavioral Neuroscienceとか,個別領域系も削減候補らしい。
マジっすか。
日本で最大規模の心理学者集団を形成しているここが,
国立大学ではおそらく最大規模の教育組織を形成しているここが,
あっさり,そんなに,APA系雑誌をざっくりと減らしちゃっていいんでしょうか...

うろ覚えだが,そのシバリのない雑誌の総額を,
40%程度にまで圧縮したのではないかと。うへぇ。

でも先立つものがないんだからしょうがない。
どうしても必要なら,
個人で買う(公的に買うなら「機関購読」料を負担 or 私費で「個人購読」)
雑誌ごとに「グループ購入」して,個々の教員が機関購読料を価格÷グループ内メンバー数 払う
などの方式で,なんとかするしかない。
もしくは,巻号単位の発想はもうかなぐり捨てて,
他大図書館などに,articleごとに,文献複写依頼をするしかない。
→abstractを吟味して,無駄金を使わないように,今以上に鑑識眼を持たねばならない。

 *

いんぱくとふぁくたーで判断したわけではまったくないようで
それはそれでひとつの見識かな。

 *

で,5月の会議の議題になるわけです。
紛糾必死(=長時間拘束)だなこりゃ。

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Commentaires

APA系の削除候補を見ると,ちょっとにわかには受け入れがたいですね…。まだ「候補」の段階ではあるんでしょうが。


昨日,学術雑誌削減に関連して,某社会系の先生に言われました。

「もっと君たちから,必要だという声を上げて欲しい!」

だけど,あれこれの事情を考えると,そう単純な話でもなさそうな気がしてきました。

大学の財政が厳しいのと同様,貧乏院生の財政も厳しい。私費で(自由に)文献収集する事を考えると,かなりしんどいですね。

Rédigé par: Deco | le 28 avr. 2006 à 17:37

あくまでも原案ですが,具体的な対案を示せなければ「本案は原案通り可決」になるでしょう。

声だけではなんともならんのです。
それに見合う経費分の収入を増やすか,
別の経費を削ってこちらに回すかしかありません。
院生さんからも「雑誌購入特別費」を学費以外に
徴収しますか(→できっこないわな)。
「PsychInfoをやめてその経費を回す」
という手段もありえます。実際これを継続するかどうかも,毎年議論されてます。
MedLineで十分だという人も一定数以上いますから。僕もですが。

さあて,どうなるでしょう。

 *

身銭を切って研究する,
院生の鏡だねぇdecoさん。

 *

えー,自分の書いた記事部分について,
国語的には

× 紛糾必死
○ 紛糾必至

と気づいてしまいました。
しかし気分的には,
長時間拘束→必「死」と書いても
意味的には差し支えないような。

Rédigé par: m0ch1 | le 28 avr. 2006 à 23:40

>>APA系の削除候補の雑誌たち
本気(もしくは正気)なのでしょうか…と怖気。
あげられていたAPA系の雑誌を大量にコピーしてきた身としては私費での複写を考えると身が凍る思いが。。。

対案…出るんでしょうか…

大学本体が使ってるよくわからん施設の拡充やら悪趣味な外装ペンキ、変な銅像に掛けているお金、回んないですかね…

いったい今の雑誌数をキープするのにどれぐらいの「額」が必要かはわかりませんが、院生に「可能な」負担を求めるのも一案なのかも、と思ってしまうワタクシでした。
いや、お金ありませんが…

Rédigé par: @ | le 29 avr. 2006 à 00:03

身銭をきって(というのはもちろん卒論生でも院生でもないので。)、文献をあさりまくっている(コレクションしているだけともいう)わけですが、学外者は「なんでないのー」と勝手に思ったりするわけですが、やはり予算が大変なんですね。

これからはもう少し、よく行く大学図書館に感謝せねば、と思いました。

Rédigé par: aoi | le 29 avr. 2006 à 01:04

@さん

> いったい今の雑誌数をキープするのにどれぐら> いの「額」が必要かはわかりませんが、

600万は行っているね。
そのうち,シバリのあるのが400万ほど。

医学では,億単位らしいですよ。

Rédigé par: m0ch1 | le 01 mai 2006 à 22:50

aoiさん

コレクターなんですね。
私もかなり「収集」家なほうです(でした?)
「なんでないのー」は私も以前,けっこう思ってました。
古い論文はしょうがないのだけれど,
最近のは電子ジャーナルパッケージが導入されて,いくらかはその不満度が下がったのだけれど
(冊子で購読してなくてもpdfファイルで入手できたり)。

予算のことは,
大学本部(この場合は図書館もこっちサイド) vs. 部局 の闘争のひとつだったりもします。
最初,違うハナシだったんですよ。
(↑ていうのはよくあるハナシで)
電子ジャーナルパッケージ代は本部=図書館持ちにするとかいうような。
...どうも本部は最近,ハコモノに目がいってるようで。

Rédigé par: m0ch1 | le 01 mai 2006 à 23:09

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