信じない。優柔不断で,どちらかといえば単純なほう。
『系統樹思考の世界-すべてはツリーとともに』
の最節約的要所。
仮説の「真偽」は必ずしも判定できない
...一方,現実の科学の現場では,得られたデータに照らし,ある仮説や主張がどれくらい
妥当なのか,対立仮説と比較してその仮説を受容できるのかどうかが大きな問題です。デ
ータに基づいて,ある科学的仮説が「真」あるいは「偽」であることをテストするのは,
かぎりなく困難だと言わねばなりません。
科学では,仮説の論理学的な意味での「真偽」を判定しているのではなく,データに支
えられた範囲での仮説間の相対的比較をしているのだと考えたほうが,実際により近いと
私は考えています。これはデータに基づく推論とみなせます。...
(pp. 57-58)
第三の推論様式―アブダクション
...データが理論に対して「経験的支持」を与えるとき,同じ現象を説明する複数の対立理
論の間で,「支持」の大きさに則ったランクづけをすることができます。あるデータのも
とで,もっとも大きな「支持」を受けた最良の仮説を頂点とする序列です。そして,経験
的支持のランクがより大きい仮説を選ぶという基準を置くことにより,仮説選択の方針を
立てることが可能になります。
(p.64)
...理論の「真偽」を問うのではなく,観察データのもとでどの理論が「より良い説明」を
与えてくれるのかを相互比較する―アブダクション,すなわちデータによる対立理論の
相対的ランキングは,幅広い科学の領域(歴史科学も含まれる)における理論選択の経験
的基準として用いることができそうです。
(p.65)
伝言ゲームでまちがって伝えたのは誰?
...基準となるある変数を最小化することで特定の仮説を選択することは,「最節約基準」に
もとづく仮説選択と呼ばれています。
(p.184)
先週末の"軽井沢行き"のおともに連れて行きかなり集中して読んでしまい,
すっかり「系統樹思考」者,「系統樹図形言語使用熱」者になってしまいました。
アブダクションと最節約基準(最節約性)に関して必読
もちろん私の関連する研究分野でもどんな分野でも。
~科学者なら100%真なるものなど信じないし,
いつも優柔不断なんだけどいざというときはよく考えて単純なほうを選ぶ,ってことです。
うんうんそうそう。
とか書こうと思っていたら。
すでに著者の"網の目"にひっかかっていたらしく,
leeswijzer: boeken annex van dagboek
に[言及]として掲載されておりました(最近読んだ本として★を5個つけるのも[言及]相当らしい)
さすがに,dagboekからもうかがえるその博学ぶり(とか面白ぶりとかそんなに「外」に行けるのかと嘆息とかいろいろ興味深いのです)が
余すところなく披露されてました。
すごそうです,三中先生。直接お目にかかったことはないのですが。
※ もちろん表紙カバーは書店で買う前にまず外してみた。
※ 勤務する大学の書籍部での「今月発行現代新書内平積み減少率」はトップでした(昨日現在)。
売れ行き好調なんでしょう...あ,でも「厚さ」のせいだったり?
もちろん,前者でしょう(←そういうのを最節約基準による仮説選択というのでしょう)
※ きっとこれも著者の目にとまるのでしょう。「次のご計画」ありやなしや,気になります。
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Commentaires
> きっとこれも著者の目にとまるのでしょう
ハイ,きっちり目にとまりました.拙著の要点を最節約的にまとめていただき感謝です.次なる「犯行計画」はいくつもあるのですが,なにせ時間がねえ・・・.今後ともよろしくお願いいたします.(みなか)
Rédigé par: leeswijzer | 29 juil. 2006 19:02
す・か・さ・ず
コメントをいただきありがとうございます。
関係あるようなないような話ですが,
うちの小1の娘,最近,
『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』という本
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4892387703/249-8382534-5625145?v=glance&n=465392
を何度も読んでます(ものすごく「鎖」的ですが)。
系統樹思考の「芽生え」はいつごろなんでしょうね。
Rédigé par: mochi | 29 juil. 2006 21:31