060918[bx1]発達認知神経社会学?!

060918[bx1]-1 socioeconomic status; neurocognitive development
Childhood poverty: Specific associations with neurocognitive development

　＃　「社会経済状態SES」が子ども（10-13歳の女子）の「認知神経」タスク7種の遂行成績に及ぼす影響。
　　　 middle vs. low （「中流」対「下流」？；年齢・性・エスニシティを統制）の比較で，
　　　 大きく差が出た順に
　　　　 言語　Left perysylvian/Language system　　　
　　　 　記憶　Medial temporal/Memory system
　　　 　ワーキングメモリ　Lateral PFC/Working memory
　　　 　認知的コントロール　Anterior cingulate cortex/Cognitive control system
　　　　　　※英語で書かれたところ，脳部位／心理機能，です。
　　　　　　　 それぞれについてふたつずつ，違う課題を課しています。

有意差が見られなかったのは，
　　　空間性認知　Parietal/Spatial cognition system
　　　視覚形態認知　Occipitotemporal/Pattern vision system
　　　報酬処理　Ventromedial PFC/Reward processing system

　＊

いやあ，いろんな意味で驚きましたよ。"multisurprising!!"（もちろん造語）

1.
日本でも「格差社会」化が問題になっていて，たとえば
社会経済状態と「学力」の格差の関係などはよく知られているところですが。
その学力の背景にある「認知神経系neurocognitive system」にも格差が生じると。
　　★ということは，
　　　　「いい学校に行かせてもらえる」ことや，「エクストラな教育...塾通いとか...を受ける」ことなど，
　　　　教育を受ける機会の不平等や質の差違だけが学力的格差を生じさせているのではない，
　　　　という可能性が示唆される，ことになる。

2.
しかも，SESは，そういった認知神経機能の十分な発達に
一様におしなべて影響を与えるのではなく，
特に言語や記憶というところに影響を及ぼしているらしいというところ。
認知神経システムのうち，影響を強く受けるところもあれば
弱く受けるところもある，という違いがどうもあるらしいというところ。
これも「格差」といえば「格差」。

3.
最も遅く発達する（といわれる）前頭前野背側が関与するワーキングメモリーなどよりも，
言語や記憶。
それでいて，前頭前野腹内側の報酬処理には差がないと。
　　★もっとも，この点は，もう少し上の年齢で検証してみるべきかもしれない。

4.
「認知神経科学」と「社会学」をつなぐっていう発想。
そしてこの場合，発達も加えて。
発達認知神経社会学？？
"developmental cognitive neurosociology"とかいうことか。

5.
わりとガチガチなneuroscience系雑誌である Brain Research に掲載されていること。
　　★他の雑誌は...躊躇したのかもしれない。
　　　　Editor(s)側かAuthors側かその両者かしらんけど。根拠のない勝手な推測。

6.
First authorが　Martha J. Farah　であること。
　　★この業界に詳しくないと意味不明でしょうが；最近そういうことをしているのね。ふーん。

　＊

もちろん，この結果を説明できるような，因果関係の解明は「今後の課題」。

　＊

ところどころ，
"tax-specific" neurocognitive systems　という記載があるんだけど，
tax-specificってなにかの専門用語なんでしょうか？
税金って意味じゃないらしい。
負担特異的，とか？