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13 sept. 2008

「医療領域に従事する『職能心理士(医療心理)』の国家資格法制の確立を」

さて,私のところ,休日にはめっきりアクセス数が減少する「平日ブログ」なんですが,
今日はA Forward-looking Child Psychiatristさんのところ,
職能心理士 ブログ界隈の反応」でご紹介いただいたおかげで,
そちらからアクセスされる方が多いようです。

はじめましての皆様(が多いんじゃないかと思います)は,どうもはじめまして。

最近あれやこれやと忙しく,全然"周辺的"情報に気が回っていなかったのですが,
そんな提言(←pdf)が出されていたのですね。

臨床心理士と
医療心理師と
職能心理士(医療心理) ← これが「増えた」というか「具体化されて公表された」。

せっかくの機会ですから,意見表明しておきます。

私の立場的な前提条件,立ち位置は,以下の4つです。
(そういうことを述べないでジャーナリスティックに語れるような問題じゃないでしょう)。

 1) 現在,大学・大学院において心理学教育に携わっている。
 2) (日本心理学会の)認定心理士資格認定委員である。
 3) 「資格ホルダー」ではない。この問題を「自分自身にひきつけて」考える立場にない。
 4) 第一の専門領域として,「神経心理学」を掲げている。

結論をまず先に。

はっきり言って,どうであってもけっこうです。
(ただしひとつだけ願望のようなことはある;最後に述べる★)

国家資格というのができるなら,そりゃいいことだとは思います。
でも,私自身は資格そのものについては,あまり関心がないっす。

こう見えても,自由に研究をすることが好きなんです。
「どうなっているのか」「どうしてなのか」を明らかにすることの方にまずは関心があって
「どうすればいいのか」とかは,そのあとにくるべきものだと思っているので。
研究と教育が現在の公的な私の仕事であって,
「心理職」「心理技術者」であることが私の仕事だと思ったことは,これまで一度もない。
だから,この話題になっている「資格」は,職業とか実践とか技術とかと密接に結びつく概念ですが,
私にとっては,私の考える私の職業的自己像(とか,他者からこう見られたい職業的自己像)に
含まれないし,含むべきとも思えない,私の考える自己像とは相容れないものなのです。


 *

私がこの一連の話題の中で興味があるのは,以前に書いたように
教育的な側面から,カリキュラムとキャリアというポイントだけ。

前提条件1)から。

・学部で心理学教育をきっちりさせようという方向性に異論はありません。
 よく,「学部で心理学教育を受けていない人々が指定校に入学してきて...」
 というくだりを見聞するが,それは私が現在いるところではほとんど当てはまらないので
 その点は触れない。
 (本当にあるとすると,それは大学院「入試選抜方法」に問題があるわけで,当該大学院とか
  その大学院の経営上の問題,あるいは指定校の数が多すぎるのでは?という方向に,
  まずは思いを巡らすべきだ) 
・しかしながら,現在のいわゆる「指定校」大学院が一般的な「大学院」のありようから言って,
 きわめて突出して偏った存在かつ内容であることは,たしかにそうである。
 大学院は専門学校じゃなく,研究をするところだという大前提が保てないようなら,
 すべからくすみやかに「専門職大学院」とやらになってほしい。
 この辺は,「対外報告」の3ページにあるとおり。
 そのことがもたらす弊害(どこにメリットを見いだせましょうか)は大変大きいと思っている。
 それから,質を一定に保つという意味で,なんでしょうが,
 カリキュラムががっちりと固められすぎていることで,
 なんの特徴/特長もない人々を機械的に量産させるしくみになっている気がしないでもない。
  ※ただしこれは個々人の意識に左右されるところが大きいでしょうね。
・就職先・就職条件が改善されることが見込まれる点は,歓迎すべきことなんでしょう。


前提条件2)から。

・上の話と関係するけど,心理学部/心理学科/心理学コースといっても,
 学校によっては,(認定心理士の)b領域やc領域がたいへんギリギリだったり,
 選択科目の5領域のうちはじめから3領域分しか申請できないところ
 (そういう科目しか立てられていない)も存在するらしい。
 それは,つまり,教員の特定領域への偏り,バラエティの貧しさが背景にある。
 そんなことでいいのでしょうか,という疑問はあるわけでして,
 これを改善するひとつの方向性として,医療心理師とか職能心理士(医療心理)には賛成する。
 (...そういうよくわかる「意図」は,ぼかすよりももっと明瞭に言ったほうが得策なんじゃないか)


前提条件3)から。

・この立場からすると,実にどーでもいい話。
 これまでの経験からやってくる,個人的な,感情的な議論しかできない。
・そんなに「実践」とか「現場」ってのが大事ですか。
 ...大事じゃない,必要じゃないと言っているのではなく,
いわゆる心「理学」的な研究が軽んじられる風潮に,ただただいらつくだけです。
・資格を取ることが最大で唯一の目的みたいになってる(それさえできればよろしい,みたいな)
 人々がいるらしいのですが,そういう考え方に私がまったく同意できないだけです。
・もちろん,資格ホルダーでないことによる有形無形の不利益は現にありますよ。
 「持っていない」ことで得られるメリットはまったくない,ということも事実です。
 (...あ。カネがかからないことはメリットかもしれない)


前提条件4)から。

・医療心理師カリキュラム案でも,職能心理士(医療心理)の養成教育カリキュラム案でも
 (単位数とか,細かい違いはあるけれど,ほとんど同じと見ていいみたい)
 「神経心理学」は必修的位置づけの「心理学特論」のひとつなので,そりゃあけっこうです
 (これに対して,現行の臨床心理士カリキュラムでは,ただの選択肢のひとつにすぎない;
 しかも開講されていればの話で,たいてい開講さえされていないのが実情だろう)。
・「提言」の10ページを読まれたし。
 医療との協力ということだけでなく,医学研究との協力という視点は
 絶対的に必要です。そういうことが求められたときに応じられる程度の知識や経験はあるに
 こしたことはないと思います。でもそれが学士教育レベルだけで身につくとは思えませんが。
 現行の臨床心理士養成カリキュラムでもほとんど考慮さえされているとも思えませんが
 (ま,忙しいですからねぇ)。
 また,何も心理職は「精神科」にだけ関係するわけではないのだという認識も大切でしょう。
 これらの点を改善するために,道具的にであっても「神経心理学」を学ぶメリットはあると思っています。
・必修化された場合の問題点はみっつ。
 ひとつめは,「誰が教えられるのか」です。必修化に応じるだけの心理学教員がそんなにいるのか。
 実現可能性という点を考えているんだろうか。
 ふたつめは,「神経心理学」が実践のためだけの学問であるという誤解を生まないか,
 という危惧。神経心理学検査だけ教えて/実習してみて...みたいのは,おかしいということ。
・みっつめは,既に国家資格であるところの「言語聴覚士」さんとの棲み分け。
 失語など,ことば関係はSTさんで,あとは心理資格者?なんか変な感じ。
 神経心理アセスメント・高次脳機能障害アセスメントは誰が担当するの?という話。

 *

この問題,数年前に国会に上程されるか,みたいな話になったときにだいぶネット上でも
いろんな意見が表明されていたようですが,
私が知る/考える限りで少なくとも5階層(論点,とでもいうべきか)くらいの対立点があって,
国会議員にさらに働きかけを,とか,国会に上程されれば...,なんてぼんやり思っているような
人々がいるとすると(いる気がする),その「おめでたさ」にはあきれるばかりです。
むしろ軽々と法案化されてしまっていたら,えらく大変なことになっているでしょうな。

 *

★ただひとつだけ。

某組織団体の専横的状態がいささかなりとも減じる方向でありさえすれば,
私は何にでも賛成します,はい。
「諸悪の根源」があるんだということです。

ひとつといいつつ,ついでにもうひとつ。
この問題はものすごく「政治的な読み」が必要なんじゃないでしょうか。
国会とかに関係なくふつう使う意味での「政治的」という意味で。
そういうことって,どちらかの側にいるような人々には見えにくいんでしょうね。

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