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24 oct. 2008

NP-JC/081024

Impaired imitation of meaningless gestures in ideomotor apraxia:
A conceptual problem not a disorder of action control?
A single case investigation

「観念運動性失行」症例SCの呈する模倣障害に,「身体情報処理」が関与していることを,
実験的に検討した論文。
※現在支配的であるHeilman系モデルによると,無意味動作の模倣は
 視覚分析(入力)→神経支配パターン(出力)のvisuo-motor/spatial-motorな
 変換,ということになっているのだが,それだけじゃなくって,そこには
 身体情報処理(「概念的な」)が絡むでしょう(=Goldenberg系),
 ということを支持するような知見。

実験は3つ。で,それぞれの実験はコトバでは表現しにくいが,Figを見れば一目瞭然。
実験1:指の絶対空間的,相対空間的,概念的マッピング。
   →概念的マッピングで大きな成績低下。
実験2:身体部位の概念的/視覚的マッピング。
   →やっぱり概念的マッピングで,正しい位置よりも遠いところを指示する傾向。
   ※「ジョジョ立ち」みたいなポーズを取っている人の身体部位を1ヶ所マークして,
    普通に立っている人の身体部位上で同一箇所を指示する,というような課題
    が,概念的マッピング。
実験3:手指パターン/身体姿位模倣のマッピング(Direct/Mirror/cartoon)
   →Cartoonへのマッチングが時間がかかり,誤反応率も高い。

...ということで,
単純にvisuo-motorなマッチングができないだけならこのように条件間の差異が
生じることを説明できず,かつ,概念的な身体情報処理が求められる課題において
顕著な成績低下を示すのだから,無意味動作模倣においてやはりそのような
概念的身体情報処理が関与するでしょう,という論の流れ。

※発表者は課題を理解するのにだいぶ格闘したらしい。
 一人で検査者役と被検者役をしながら理解するのは,さぞや大変だったことだろう。
※BPOとかclosing-inとか...頭の中で生じることを外界に表現するときに生じる
 「象徴」とか「イメージ」のことを議論する(若くてピチピチだった院生の頃の私のようだ)。
 「面白いねえ」「不思議だねえ」ということ。
※モデル的に理解することの有用性。何を考えなくてはいけないかを理解する上で,
 モデルの存在は有用,ていうか不可欠(であることを皆で体感)。
 ・でもこの論文には,そういうBox & Arrowは示されていないのだけれど。


     *


Facial expression processing after amygdalotomy

扁桃体切除術を施された症例D.R.の表情認知はどうなるか(vs.人物認知)の論文。
けっこう昔の。

スタディ1。静止画と動画の表情認知。
   →対照群と比較して,動画で成績が不良
     (対照群では動画で成績が向上する部分が,D.R.にはみられない)
スタディ2。表情マッチング。人物マッチング。
 (A)同人物同表情,(B)同人物異表情,(C)異人物同表情,(D)異人物異表情
 というペアを提示して,人物が同じか,と,表情が同じか,を判断させる。
 ペアの提示方法も,同時(横に並べて)的提示と,継時(順番に)的提示。
   →表情マッチングで成績低下。提示方法による影響はない。
    誤反応の中身は,表情マッチングでは(B)(C)で多く,
    人物マッチングでも,(B)ではやや多い(表情を分析する能力も人物同定に絡んでる?)
スタディ3。表情のイメージ課題。人物のイメージ課題。
   →表情をイメージし答える課題(笑ったときに口角は下がってる?のような)で低下。

相貌失認とは逆パターン,二重乖離がある,ということは,
少なくとも一部は,相貌(人物を特定する)認知と表情認知は別個のシステム。

※「表情カテゴリーごとの分析がなされていない」という感想は,たしかに現代的な
  視点からするとそうなるけれど,この頃はまだ。パラダイムシフト(?!)前。
  相貌失認との対比がメイン。
※(私にとって)この論文で動画で検討していた,しかも"in conversation"という条件が
  あったことは,見落としていた。しかも,動画での改善がないという。
※やっぱり誤反応パターンを見ることは大事な作業。
※イメージ課題を行っている理由は何か,というところ。
  たしかに,「知覚」と「イメージ」のneural substrateの共通性がよく論じられていた
  から(「視覚性失認」と「視覚性イメージ」)という理由もあるが,タスクとして
  知覚駆動型と,記憶駆動型を比較する
   →どちらでも表情処理に問題がある
   →→用いられる処理様式特異型の障害ではなく,表情認知処理そのものの障害
  という確認は必要。ここでは「とってつけたような」記載だけれども。
※「定位脳手術」のイメージを共有。

両論文とも,症例研究(でも,単なる所見の記載のみではなく,実験的検討を含む)。
そういうのが,やはり神経心理学的研究の王道ですな。

内容もそうだけど,むしろ症例の呈する不思議な症状を前にしたときに,
どんな実験をすべきかをどのように考え出すのか,というところとか,
どういう視点で結果を見るべきか,とか,
そういう方法論的な面で,良い勉強をする機会になった会だったように思います。

来週もやる予定。

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