090204[bx1]"closing-in"2本
"closing-in behavior/phenomenon"(CIB/CIP)とは,描画(模写)中に,
見本に近づいてしまう/くっついてしまう/見本そのものをなぞってしまう現象を指す。
高次脳機能障害患者さんの中には,
(描画課題やブロックデザインや手指パターン模倣などの)構成課題中に,
そのような症状を呈する方々がいる。
090204[bx1]-1 closing-in behavior; constructional disorder
Animal magnetism: Evidence for an attraction account of closing-in behaviour
in pre-school children
closing-in出現を説明する仮説としては,
第一仮説>compensation hypothesis:視空間的and/or記憶障害を代償する方略として;
第二仮説>attraction hypothesis:視覚的注意のターゲットに近づく/なぞる行為はデフォルトモードである
がある。これを検証するために,
15名の幼児を対象に(就学前幼児には自然にこのCIBが出現することがあるので),
【動物の線画が横に15個ならべられていてそれを呼称しながら,
その上または下に,にシンプルな横に伸びる直線を描く】
という課題を実施した(第一仮説が正しいならばCIBは出現せず,第二仮説が正しいならばCIB出現)。
→CIB出現。第二仮説を支持。
→→アルツハイマー型認知症患者を対象にした先行研究でも同様に第二仮説が支持されている。
090204[bx1]-2 closing-in; CBD
Closing-in without severe drawing disorders:
The “fatal” consequences of pathological attraction
CBD(皮質基底核変性症)患者さんのCIP現象の研究。
模写課題中にCIPが出現し,描かれたものは歪みが生じたりするが
1)記憶からの描画はかなり上手に描く;
2)視空間的能力は保たれている;
ということで,どうやらfrontal-related release of approach behaviorと捉えるのがよい。
Cortex Volume 45, Issue 3は,
Special Issue on "Cognitive Neuroscience of Drawing"
なんですが,
この特集の冒頭にCIBの論文2本を載せるところが,
なんともシブい。粋な感じ。
*
たしかにCBDの患者さんで,描画そのものは良好なのに
模写課題時のclosing-in現象 &
上肢接近現象(視覚対象に触れずにパントマイムする時に,呈示物品に手が近づいてしまう)
→あわせて"接近現象"
を呈する方を経験したことがあります。
CBDというのは,ちょっとそういう状態になりやすい疾患なのかもしれません。
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Commentaires
僕もCBDの方で、手指模倣のときにCIが出たのをみたことがあります。
どうしてなぞったり触れたりすることがデフォルトなんでしょうね。触れるのがデフォルトなのはなんとなくわかるんですが。なぞるのは・・?
Rédigé par: kob@tokyo | 04 févr. 2009 13:04
共通項は,「探索」するってことでしょうか。
ターゲットに向かって手を伸ばして触れるのと,
ターゲットの特徴部分をなぞる,
前者は,自分→対象,という探索で,
後者は,対象の部分A→部分B...のような探索で。
こんな風に答えてみても,デフォルトであるとする理由にはならないけど。
なんか,対象を探索して「よりよく理解する」ことは,生存にとって有利に働いた,とか?
近づく→触れる,と,なぞる,の違いは
前頭葉性行為症状の,
(“本能性把握反応”の)gropingと,
使用行為utilization behavior(なんとなくさわっちゃう)との違い,というような雰囲気かもしれません。
あるいは,もっと簡単に
「なぞる」のは,模写という描画課題をしなきゃという意識というか,「意図」から発生するのかもしれません。
だって,患者さんたちは常に何かなぞっているわけじゃないですもんね。
Rédigé par: mochi | 04 févr. 2009 19:42
確かに使用行動のような患者さんでも、なぞる行動はあまり見ないですね。
Closing-inは何かを指示した場合に出るものですし、
何らかの意図が生じる(描画、道具使用など)→関連する運動の候補が喚起される→適切な運動に収束せず、より頻度が高い(あるいはより表出が簡単な)運動が表出される
というような流れを想像しました。デフォルト説プラスα、といった感じでしょうか。
Closing-inに関して、患者さんがあまり自覚が無い様子なのも不思議な感じですよね。
Rédigé par: kob@tokyo | 05 févr. 2009 00:13
昔あれこれ考えました。
私は行為表出時の「イメージ空間」と「現実空間」の切り離しがうまくいかない,という
(どちらかというともう少し入力側の,というか,入力と出力のインターフェイス部分)
仮説モデルを抱いたのですが...あまりに「象徴的な解釈」でしたね。
dementiaの方々での出現と,幼児での出現を説明するには少々都合のいいところがあるのだけれど
(CBDの方にけっこう特異的であるとすると説明しにくい),
おそらくkobさんには受け入れられないでしょう。
自覚がないのは,イメージ空間-現実空間切り離し不全説では,ある意味当然ですかね。
「イメージ空間」ではきちんとできていると思われているのであれば。
...でも,注意というか,課題そのもの/対象そのものに集中することで,
パフォーマンスそのものへの注意がやや低下する,
ということもあるのかもしれません。注意資源の配分の偏り。
fronto-parietalの注意の問題要素も考慮するとなると,
けっこうフクザツな問題ですね,closing-inって。
Rédigé par: m0ch1 | 05 févr. 2009 07:33