神経心理学演習10-3&4
ワタクシが先生をするのは今回で最後。
次回から,受講生が先生役。
人数が固定したと思うので教室変更を支援室に申し出てさっそく移動。
おひとりは体調不良で欠席。もうおひとりは?
→5人。
1コマめ:
★神経心理学論文の種別と構造を日本語論文で★
『神経心理学』『高次脳機能研究』両誌に2009年に掲載された
原著論文28本を形式面でカテゴライズして,
神経心理学関連の雑誌論文に載るような研究の特徴をあぶり出す,
という作業。
4系統に分けられる。
(1) 症例研究(ケーススタディ)=13本
(2) グループスタディ(対照群なし)=7本
(3) グループスタディ(対照群あり)=4本
(4) 訓練効果=3本
(*) その他(健常者加齢系)=1本
すなわち,症例研究の比率が大きいことが,この領域の特徴である。
歴史的にみても,研究方法論的にみても。
※しかし,これはまたいわゆる心理臨床論文における「事例報告」とは全然異なることに注意。
※なお,題目を見て,読んでみようと受講生にピックアップされた論文は,
(1)から3本,(2)から1本,(4)から1本でした。
一般的な心理学研究論文では,
目的・方法・結果・考察というセクションからなるが,
症例研究の場合,
方法・結果セクションの構成が異なる場合が多い。
症例(現病歴・神経学的所見・神経心理学的所見・画像所見...)の記載。
このあと,特定の特徴ある所見の詳述,
あるいは,特定の特徴に関する特別な検査結果の記載。
※症例研究ではほとんどの場合,画像所見が図として存在する。MRI画像など。
※症例研究では,先行研究(類似の「既報告例」との対比検討が考察で綿密になされる。
(表にすることもある)
...などといったようなことを説明。
もちろん,
目的(「はじめに」)セクションでは,
トピックの導入,先行研究の紹介,「しかし」→「そこで」,
考察セクションでは,
まず研究の小括(=要約的に)で始まり,最後に本研究の限界とか今後の課題を述べる...
というところは,一般的な心理学研究論文と同様。
...などといったようなことも説明。
昼休み時間,私は隣の建物で某委員会(顔をあわせるのは年に1回だそうだが)...
休憩もございません。
2コマめ:
★英語論文の読み方のポイント★
題材は,今週ホットな こちら を。
そしてこれがジャーナリストの手にかかると こうなる (特に,タイトルが)というのもあわせて。
今日やらずしてどうする,という論文ですもんね。
内容について,私がどう評価するかのコメントは差し控えます。
「脳トレ」といわれているトレーニングによって,
トレーニングには直接的には関係しない認知能力の向上(「転移」)・
"全般的な"general知的能力の上昇にはつながらない,
という知見が得られた。
いい研究ではある。研究のスタイル面では。
対象者の人数の大きさといい,
実験群を2種設定した巧妙な感のある実験デザインといい。
英語については,
パラグラフリーディングということと,
Figure/Tableこそしっかり読みときましょう,ということに力点。
& みなさんの英語論文読解力を査定...
英語の授業じゃないんだから,読み間違えない程度に手抜き読みするように。
心がけとしては。ということもあわせて。
※この,一文一文丁寧に訳しながら読む→(ではなく)→構造を考えて強弱つけて拾い読む,
読む姿勢のスイッチングを明言することは大事
★論文を批判的に読む姿勢の涵養★
さて,元の論文を眺めたうえで,
それでは,このNewsの見出しにございます
No gain from brain training
は,本当にそう言い切っていいものか,と議論をふっかけてみる。
そのためには,元論文を読んだときに,こういう可能性は?この点はどうなの?
という疑問が発せられることが大事でしょう。
※書かれていることを鵜呑みにはしない態度,ということ。
そこで,5人それぞれ異なるように,
この論文にイチャモンをつけるとするとどんなところにつけるのか?
質問してみる。
→みんな答えられたよ。超優秀!
→→そういう態度は,今学期ずっと継続してくださいね。
他の受講生先生がご発表なさるときにも。
→蓋然性の高さの評価には,結果がこうだったというところだけじゃなく,
方法論的吟味,プラス面とマイナス面をはかりにかける,といった
態度が肝要かと。どちらが「より」もっともらしいかの問題。
けっして,何か100%白黒はっきりさせられるようなもんじゃない!
次回以降の発表する論文をうかがって重なりがないことを確認し,
本日はそこまで,となりました。
*
アドリブでやったわりには,意外にも濃い内容だったな,2コマ。
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