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11 juin 2010

神経心理学演習10-15

北島さん担当。

眼帯。空間的バイアス。線分二等分。健常者。

Monocular patching may induce ipsilateral “where” spatial bias

(片眼を隠すと,同側"where"空間バイアスが生じる)


...眼帯すると,線分二等分検査の中心位置がずれる,という研究。

A.
脳損傷者では損傷の対側の半側空間無視,
健常者では二等分点が左にややずれる'pseudoneglect'が生じる★ことが知られている。

線分二等分検査で生じるこれらのバイアスがどのような処理時点で生じるかについては,
以下の3つの原因が考えられる。
 (1) perceptual-attentional "where" systems: 知覚・注意の時点での(入力面での)バイアス
 (2) representational "where" systems: 脳内表象の時点でのバイアス
 (3) motor-intentional "aiming" systems: 運動・意図の時点での(出力面での)バイアス

どの時点でのバイアスなのかを検討するために,
入力と出力を分離させる
(線分の画像を,ノーマル画像を見せるか左右反転画像を見せるかによって;
 左右反転画像を見ているときは,見ている画像の右に動かしたければ手は左に動かさねばならない)

B.
眼帯をすると空間的なバイアスが生じることは以前より知られている。
たとえば,左眼に眼帯をしているときに,
 (1) 中心点が右側に寄るバイアスを報告している(Sprague effect)研究と,
 (2) 逆に,左側に寄るバイアスを報告している研究がある。
どっちなんだ?

C.
通常に眼帯をしているときには,視覚的に遮蔽されるだけでなく,
眼帯をしている側の眼周辺には触覚的接触が存在する。
その触覚的情報が何かパフォーマンスに影響を与えているかもしれない。そこで
 (1) 片眼に通常の眼帯(視覚遮蔽あり+触覚的接触あり)
 (2) 片眼に眼帯,ただし見えるように穴が開いている(視覚遮蔽なし+触覚的接触あり)
 (3) 眼から2cm程度のところに衝立を立てる(視覚遮蔽あり+触覚的接触なし)


...そういったあれこれを,A. B. C. まとめてめんどう見るぜ!! という実験計画で行われた
 健常者を対象とした実験。

結果。
→ "where"バイアスが生じるが,"aiming"バイアスは生じない。
→ 眼帯をしたのと同側に二等分点が偏る,つまり
   左眼では左方に,右目では右方に寄るバイアスが生じた(Sprague effect不支持)☆
→ 通常眼帯,および視覚遮蔽条件で上記バイアスは生じ,
  視覚遮蔽なし+触覚的接触ありの条件ではバイアスは生じない。


☆見えない・見えにくい側の情報を代償compensate処理していることを示唆。
  トップダウン的に。


★pseudoneglectの件で検索し,私のこのblogのどこかの記事がヒットした,と報告された。
 ...役に立つblogではありませんか(笑)


 *


眼帯をしたときは気をつけましょう。
中心点が1mm~1.5mmほど,眼帯している側に移ります!

この他に,性別要因や距離の要因というのも実験には含まれているという,
なんとも「頭の体操的」論文なのですが。
一箇所,距離×男女の交互作用が有意だった(→しかしその後の検討はなされない)
という箇所があり。個人的には興味津々でアツくこの点を語ったのに,
受講生のみなさまの反応はイマイチだった。
またしかに,
男性は眼帯をしているときに近くの空間の中心がややずれる,
逆に女性は遠くの空間においてずれる,
といった結果が何か実生活に影響を及ぼすかといわれたら,及ぼさないであろうことは明らかだが。

原則を曲げての「健常者対象」の研究だったが,
中身はじゅうぶん神経心理学的だった。

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