NPJC100715
視点を切り替えるコスト(switching cost)の話。
7月18日&19日追記。
Real world referencing and schizophrenia:
Are we experiencing the same reality?
こちらの頭の切り替えが必要な難しい論文でした。
*
(07.18追記)
視点取得の問題を,視空間参照枠(visuo-spatial referencing)の点で
しっかり検討しましょうということ。
egocentrism(世界を自分の視点から見る能力)と
allocentrism(世界を自分以外の視点から見る能力)。
※これまで精神科疾患では検討されていないという。
この論文では,
allocentrismを object-centric と landmark-centric という点でも分けており,
これらの視点がパフォーマンスに与える影響を検討する。。
提示される画面には,ランドマーク(palace)と,赤いボールおよび青と緑のゴミ箱がある。
EGO: 「自分に近いゴミ箱はどちらか」
BALL: 「ボールに近いゴミ箱はどちらか」
PALACE: 「パレスと近いゴミ箱はどちらか」
と問うことで,視点の違いによるパフォーマンス(反応時間,誤答率)を測定する。
もうひとつ。
「視点の切り替え」の問題も扱う。
ひとつのセット(たとえばEGO)は,6画面からなり,連続で同一の課題を行う。
次のセットでは,
この課題と同一のセット(EGO)が続いたり,
これとは異なるセット(BALL=OBJECT/PALACE)になったりする。
後者の場合には,視点の切り替えが必要となり,それに伴って
次のセットの特に1試行目では,RTが遅くなり,また誤反応が増加することがある★
★これをスイッチングコストという。
Allo(OBJECT/PALACE)→Egoもあるし(アロエゴスイッチ)
Ego→Allo(OBJECT/PALACE)もある(エゴアロスイッチ)。
48セット(1条件16セット×3)。
安定期統合失調症(SZ)患者群24名 vs. 健常統制(C)群25名。
→
全体的に,
SZ群は主効果的にRTは遅い
& 交互作用的に,EGO条件では群間差はなく,OBJECT/LANDMARKで差あり。
誤答率は全条件でSZ群に多い。
set×group ANOVA を課題条件ごとに行うと(課題を繰り返すとRTが短くなるか検討),
OBJECT条件では,SZ群ではRTが短くならない。
(EGO条件,LANDMARK条件ではset数に応じてRTが短くなる)
※ 論文主旨的には,EGO条件のみで短くなる方向に考察。
スイッチコストについて。
●Allo→Ego
RTについて,SZ群はLANDMARK→EGOでスイッチコストが高い(1画面目)
誤反応率については,2画面目に群間差
OBJECT→EGOでは群の主効果も交互作用も有意でない。
●Ego→Allo
RTについて,SZ群はEGO→LANDMARKでスイッチコストが低い☆(1画面目)
EGO→OBJECTでは群の主効果も交互作用も有意でない。
※SZ群では,EGO←→LANDMARK間のスイッチに手間取る。非対称性がある。
※少々お話しがやっかいなのはここ。
L→EスイッチはSZ群でRTが長く,切り替えないE→Eは群間差なし。
E→Lスイッチでは群間差がなく,切り替えないL→LではSZ群においてRTが長い。
そのため,☆スイッチコストは「低く」見えることになる。
総合的には,LANDMARK条件でのパフォーマンスはSZ群で不良ということになる。
→→
統合失調症患者で,egocentric perspectives は保たれているが,
allocentricのは障害されている。
特に,安定的なLANDMARK視点,そこへの切り替えが苦手。
そのような視点および切り替えの不得意さは,
社会的認知やsimulationやmentalizingなどの,
社会機能の低下の一因となっているかもしれない。
*
パレスが「安定的な」建物,
ボールとふたつのゴミ箱が「不安定な」建物で,それらで結果が異なる点は興味深い。
(fMRIでactivateする脳部位も異なるという先行研究がある。)
統合失調症以外の精神病理ではどうなのかも気になりますね。
*
(07.19追記)
擬人的に,「三角関係」で考えると何がどう困難なのか少し見えてきた気がする。
詳細は省略!
Are we experiencing the same reality?
の答えはもちろん,
No, we aren't.
だなこりゃ。
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Commentaires
ようやく追記した。
ふぅ。
Rédigé par: m0ch1 | 18 juil. 2010 22:19