『認知症―専門医が語る診断・治療・ケア』を読了
一般の人に向けて丁寧にわかりやすく,かつ質を保って書かれた,
良い本だと思いました。
特に,
血管性認知症・アルツハイマー病以外に,
レビー小体型認知症や前頭側頭葉変性症についても詳しく書かれている点と,
BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)についてもしっかり書かれている点。
さらに,
それぞれの認知症の治療とケア(特にケアのポイント)が示されているところが勉強になりました。
*
本のページの「耳を折ったところ」は3箇所。
・アルツハイマー病の物盗られ妄想への「予防的な」対応(p.50~)
・「例えば,農業に長く従事している方であれば,ある程度認知症が進行していても,園芸
療法で効果がみられることはよくありますが,都会育ちで土いじりに興味のない方にとっては,
苦痛になるだけかもしれません。同じようなことが,いわゆる脳トレーニングにもあてはまります。
ごく初期の方の認知機能を維持するためには,本人が積極的に取り組める限りは有用な方法
ですが,例えば構成障害によって,模写した立方体が歪み始めた方に,毎日書字訓練を続ける
ことは虐待に近いものがあります。非薬物療法は,患者さん各々の保たれている機能と低下
している機能を明らかにした上で,治療の目的をはっきりさせて実施することが重要です。」
(p. 101-102)
・前頭側頭葉変性症の非薬物療法→行動障害を逆に利用するような行動療法的なアプローチ。
常同行動をその患者さんの生活に適した方向に利用する例
:入浴拒否を予防する「習慣をつけておく」(p.144)
*
神経心理学の授業では,
まとまって「認知症」のことを説明する機会も時間も作りにくいのですが,
今後はこの本をオススメすることにしよう。
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