NPJC100805
扁桃体損傷患者で
顔なし/顔ありシーンにおける
情動の認識が変わるかどうか。
※画伯によるお絵描きオマケつき
Amygdala damage impairs emotion recognition from scenes
only when they contain facial expressions
一側性/両側性扁桃体損傷患者におけるネガティブ情動認知の障害は,
それに「顔」が絡んでいるときにより顕著なのだろうか。
登場人物が何かをしているところの写真(刺激)に対して
顔なし(写真の登場人物の表情を消す)
顔あり(そのまま)
で提示して,それがいかなる感情カテゴリーに属する「場面」であるかを選択する方式で。
---
(画伯によるお絵描き)
※この「場面」はどのカテゴリーに見えますか?
※顔を隠したら楽しくツッコミ入れたりとかに見えたりしません?
※画伯画像の左の人はカッパじゃありません。黄桜酒造さんとはいっさい関係ありません。
※このお絵描きの画像を撮ることを迫られた。ここに掲載することも暗に迫られた(気がした)。
---
対象者は,両側扁桃体損傷例4例,一側性扁桃体損傷例23例(左10例,右13例),
扁桃体以外の脳損傷例22例,健常対照16名。
結果。
表情あり写真:
全体の成績,恐怖場面,悲しみ場面の成績には群間差なし。
怒りに関しては,脳損傷統制群>両側扁桃体損傷患者
表情なし写真:
一側扁桃体損傷群・両側扁桃体損傷群では
怒り場面において,表情あり<表情なし ←つまり顔を消した方が成績がよろしい。
※怒り場面での成績は,表情が見えてしまうと「幸せ」と間違えることがあり。
(口を開けて歯が見えていると)
そんなわけで。
扁桃体損傷で,(恐怖場面ではなく)怒り場面,とりわけ表情が見えるときに
正答しない。
*
・健常対照のパフォーマンスをもとに,各患者のデータを相対化してデータとしているのだが。
記述統計量っぽいのが記載されていなくて不満。
※載せられない理由を邪推する
・そもそもアミちゃんがあると表情がわかって,損傷を受けるとわからなくなるのは
なぜなんだ?
目周辺手がかりを得ることとか(これはおそらくそうだろう),
体験(つーか「体感」を手がかりに弁別するとか(これは適当な話だけど)
・表情認知の研究はそりゃたくさんあるわけだが,
「その人がどういう感情であるのか」を答えるのではなく,
「その人がそのような顔をしていたら,あなたはどう感じますか」も知りたい。
※提示表情が「怒り」だったら,それを見たこちらは「恐怖」を感じるかもしれない。
※でも他の提示表情では,同じだったり,一意に定まりにくいところがあるだろう。
・その延長上で,「扁桃体損傷患者は,感情をどのように体験しているのか」議論。
神経心理学的な研究では,体験そのものを捉えることは難しい。
言葉では感じているというけれど身体反応を伴っていないとか,
言葉では感じていないというのに身体反応はちゃんとあるとか。
どうなったら「感情体験あり」ということになるんだろうか。
・ちょっと他の文献を見ていたら,そのあたりを探っている論文を発見。
両側扁桃体損傷患者で,あの有名なSMさん(女性)を,
素性を明かさず二人のClinical Psychologistが面接をしてレポートする,という
形式で,患者さんの感情体験について評定するという論文。同じ著者ら。
Altered experience of emotion following bilateral amygdala damage
(Google Scholarで著者原稿は読めました)
...やはり何か少し異なるように「見える」らしい。
※CPさんをこういう風に研究に巻き込んでいるのは珍しい。あまり見たことない。
へーっと思ったけど。
などなど。
ランチタイムジャーナルクラブだったが,甘いお菓子が多かった。
*
次回はもう2学期!9月2日!
しかも
担当は私,ということに...
レジュメ作るのなんて,いったい何年ぶりだろう...
どの論文にしよう...
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Commentaires
そういえば,おふたりがなぜか
記憶からの描画で,Rey複雑図形を描いていたが。
そのうちのおひとりは,「上下左右が反転した」Rey図形を描いていた。
対面式でその検査を何度もしていて,かつ,
描くプロセスをよく見ておられるのだろう。
Rédigé par: m0ch1 | 06 août 2010 10:12