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17 avr. 2011

110417[bx1] Personal neglect(身体無視)

意外なことに,"personal neglect"とタイトルに含む論文はこれが 6本め らしい。
PubMedで検索すると。

少なっ!

110417[bx1]-1 personal neglect; body representation; TPJ
Personal neglect—A disorder of body representation?

パーソナルスペース(身体空間)に生じる半側身体の無視現象で,
 ※講義では,左顔のひげをそり忘れたり(男性)/お化粧をしなかったり(女性)と説明している
エクストラパーソナルスペース(身体外空間)に生じる半側空間無視を伴うこともあるが,
これらが乖離して生じることもある。


この研究では
仮説A: 患側身体表象に限定して生じるのか,
 あるいは
仮説B:身体に限定しない,患側空間全般(「身体外」も含め)の心的表象の障害なのか,

実験的に検討された。

対象は,右半球脳卒中患者のうち,身体無視あり群(PN+)となし群(PN-),および健常対照群。
提示刺激は,手の写真または物品(車のフェンダーミラー★)で,prototypical/nonprototypicalがある。
課題は「右手か左手か」/「右向きか左向きか」を口頭で答える。
誤反応率と反応時間が従属変数。

簡単に言えば,手の写真のみに成績低下が見られれば仮説Aを,
手と物品の両者に成績低下が見られれば仮説Bを支持する知見が得られることになる。


群×刺激(手・物品)×見え方(prototypical・nonprototypical)×左右
の4-way ANOVA。

従属変数を誤反応率としたとき,有意なのは
群の主効果
刺激の主効果 (←フェンダーミラーの誤り多い)
群×見え方の交互作用 (←PN+で,prototypicalで誤り多い)
群×左右の交互作用 (←PN+で,「左側」の誤り多い)

従属変数を反応時間としたとき,有意なのは
群の主効果
見え方の主効果
左右の主効果 のみ。
交互作用はいずれも有意ではない。

いずれの分析も,
身体外空間の無視(半側空間無視)を共変量にしても結果は変わらない。

 ・

PNを予測する変数を知るために重回帰分析を行ったところ,
有意に予測する変数は「身体表象」(先の課題の,誤反応率や反応時間の左右差)のみで,
要素的感覚障害,運動障害,半側空間無視,「身体外空間表象」(「フェンダーミラー」の左右差)
はいずれも有意な予測変数にはならなかった。

 ・

PN+とPN-の病巣を比較すると,右TPJとその皮質下白質の損傷がPN+で多い。


 *


ということで,
ANOVAの結果からは仮説Bを,
重回帰分析の結果からは仮説Aを支持するような
歯切れの悪い結果が得られたわけだが
(著者らもその点はDiscussionで述べている;病巣のオーバーラップとか)

少なくとも部分的にであっても仮説Aを支持するような結果が得られたのだから,
身体空間と,身体外空間はいちおうベツモノとして,
半側身体無視と,(外空間の)半側空間無視はいちおうベツモノとしてとらえましょう。
そして身体無視には「身体表象」が関わっていますよ,たぶん。

このあたりの歯切れの悪さで,
副題 A disorder of body representation? 
末尾の「?」がついている/ついたままなのかと「読める」わけです。


★"rear-view mirrors":
 「バックミラー」の,室内にあるの(「ルームミラー」)ではなく,
 室外に取り付けてあるもので,でも「ドアミラー」ではなく,
 ボンネットの上についている「フェンダーミラー」。 ややこしや~

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