神経心理学演習11-05
(軽度認知障害とアルツハイマー病における,新たな名前と物品の学習と忘却)
軽度認知障害MCI)患者群とアルツハイマー病(AD)患者群で,
物品(古い家具らしい)と名称(例はNAHTURIとKARTTU:フィンランド語)の
対応(「単語」を)学習し,それがいかに学習されるかが検討された。
MCIでは,エピソード記憶の低下がみられるが意味記憶は比較的保たれると
予想されるので,名称+定義(意味)の刺激群と,名称のみの刺激群が用意され,
これらの刺激群で相違がみられるかも検討された。
2週間以内に,4回の学習セッションと翌日のテストセッション(セッション5),
さらにフォローアップとして,1週間後(セッション6),4週後(セッション7),8週後(セッション8)
が行われ,忘却についての検討もなされた。
(その他,再生・再認関係のいくつかのテスト)
結果:
(1) 学習(セッション1-5)は群に主効果:健常対照群>MCI>AD;セッションの主効果も有意。
交互作用も有意であり,健常対照群はすぐに,AD群は緩やかに学習する
(Fig. 3 のグラフの傾き具合が異なる)
(2) 忘却(セッション5-8)も群およびセッションの主効果は有意であったが,
交互作用は有意ではなかった(→「急速忘却」するわけではない)
名称+定義の刺激群は,MCIで,セッション8においてのみ有意に差が生じた
(3) 音韻手掛かりの効果は,健常対象群>MCI>AD
(4) 意味的サポート(定義)統制群>AD,MCI>AD(→統制群とMCIの間に有意差なし)
(5) (物品の,偶発学習的な)再認は,統制群>AD,MCI>AD
群×セッションの交互作用は有意であった。
*
なかなかオーソドックスなグループスタディをチョイスされた。
何かを学習させるような研究では,同じ結果を見ても,
少しでも学習がみられるときに,
「学習の能力の低下・欠損」ともいえるし,
「学習の能力そのものは失われていない」ともいえるし,
難しいところがあるのです,という話をしました。
「MCI」概念そのものについての質問もあり,返答に窮しました...
(MCI→ADへの進展,ということもあるわけだからねぇ)
*
今期は発表時間を終えると拍手が沸き起こることになっていた。
こういうのって,どこかで学習するんだろうか。
*
ところでここまで読んでくださった方,
例に挙げた(フィンランド語の)単語ふたつ,学習できましたか?
NA
ではじまるやつと
KA
ではじまるやつです。
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