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17 mai 2011

神経心理学演習11-08

熊谷さん担当。

Women process multisensory emotion expressions more efficiently than men

(女性は multisensory な感情表現を男性よりも手際よく処理する)

懐疑的な姿勢で望みました,そこにいらっしゃる女性陣の様子をみながら(笑)★

女性の方がそういうのが得意,というのは「お話の世界」ではまま見聞するところですが,
実証的研究はさほど多いわけでもなく,少ない実証研究でも結果はまちまちだったりする。

この研究では,表情は動画にすること,
unimodalで呈示する条件
1) 聴覚・音声のみ
2) 視覚・表情のみ
表情刺激と音声刺激を同時に呈示するbimodal条件で
3) 表情と音声が一致する(congruent)
4) 表情と音声が一致しない(incongruent)
を設けた。

実験参加者は男女23名ずつ。
呈示する表情刺激・音声刺激は,男優3名,女優3名。
感情は「嫌悪」と「恐怖」のみ。

「得意」であることを示すために,正答率,反応時間を別々にせず,
speed-accuracy composite scoreを算出して後の分析に使用した(上記1)~3)を使用)。
(speed-accuracy trade-off:「速度精度相反性」については説明した)

bimodalでのパフォーマンスが良い場合の解釈として,
レースモデル
(視覚と聴覚が独立に処理され,到達が速いほうで処理される)
が適合するかどうかも検証。
RT distributionのパーセンタイル(10パーセンタイルごと)を横軸にとり,
各条件のRTで折れ線グラフを作る,私には目新しい "redundancy gain analysis"のグラフで。


結果。

そのcomposite scoreを従属変数にした分析では,
・男性よりも女性でパフォーマンスがよろしい
・男優よりも女優が呈示されているとき,よろしい
・unimodalよりもbimodalでよろしい
・男性においては,聴覚<視覚。女性ではその差がない。
・男優では,聴覚<視覚。女優ではその差がない。

レースモデルで予測されるRTよりも,bimodalでのRTは速い(visual-auditory interactionを示唆)
これまた,女性の方が交互作用が多い。

反応のバイアスをみると,男優は「嫌悪」ととらえられやすく,女優は「恐怖」に。

incongruentに限ってみると(この条件では正解/不正解は存在しない)
上と同様+「女優が嫌悪の表情+恐怖の音声→「恐怖」ととらえられやすい」


 *


結論としては,

「男性と女性の間では,感情表現の処理の仕方と,表現能力の著しい(striking)違いがある」

※...ああそうですか。しかし,ほんとうでしょうか★


 *


論文ではイメージングの結果で女性の方が脳の賦活領域が大きいとか,
文化的な(「ステレオタイプ」のような)影響があるとか("Baby X"という興味深い知見)
進化心理学的な考察とか,あげられていました。


 *


★あえて懐疑的な姿勢をとっているだけであります。学術的な情報に接するときの基本を
 身をもってお伝えしているのであります。知見にいちゃもんをつけているわけではありませんし,
 体験的にいちゃもんをつけたいわけでもありません(笑)

・で,可能性としては東洋にいる私たちは少し異なる可能性とか,
 イクメンとノンイクメンでは異なる可能性などを指摘してみました。
 学術的に想定される可能性のいくつか,の例として。

・「中性的な俳優」の表情・音声でやったらどうなるんだろう?とか,
 「嫌悪」・「恐怖」ペア以外でやったらどうなるんだろう?とか
  - "happy"と"joy"でできるだろうかとか
 拡張とか,実験デザインまわりのことなども楽しくディスカッションしました。

・『「幸福」はなくても生きていける。「嫌悪」と「恐怖」はそれがないと生き延びることができない。』


 *


たまたま2コマとも健常者を参加者とする実験研究でしたが,よい頭の体操ですな。

そして
大学の,専門領域の,教員だからといって
神様のようになんでもかんでも理解しているわけでは決してない,
という事実を知ることも,演習の重要なタスクです。
(わからないことはわからないし,だからこそ,ディスカッションが楽しいのであります)

今日はその良い例になるんじゃないかと。
今期もまた,ディスカッションが面白いです。


 *


6月の授業での発表担当者決めをした。
アミダくじはでも,あまり過酷な試練を与えないようであります。
(授業で2回目の担当をしない人も,最終回にはレポートを作成して
 受講生全員と私に配布することになっています)

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