「研究と育児について(イクメン)」
依頼原稿を書きました。
(学類内で学生さんたちに配られる冊子の)
こんな感じ。お題を頂戴し,
気軽にとは言われていたのだが,
依頼のねらいがいまいちわからなかったので,
好きに書かせていただいた。
*
なんとも意外なテーマでご依頼をいただきました。イクメンをイケメンと空目したくらいですから。
私には娘がひとりおります。けっこう育児は「した方の」お父さんだと自負しているのですが,
そのあたりの自己評価情報が漏れたのでしょう。これを書いているいまは12月ですが,
みなさんのお手元にわたる頃には中学1年生になっています。心理学類の何人かの先生方は,
保育園時代や小学校での保護者仲間でもあります。
有名な心理学者のピアジェは,自分自身の子どもの様子を観察することで,子どもが持つ
自然に成熟していく能力と環境に対する相互作用との関係に興味を抱いたと言われています。
『知能の誕生』など。しかしながら凡人である私はそんなふうに娘を観察することはなく
(特に幼い頃はそんな悠長なことしてられません!),そのうえ「発達心理学」にはなにやら
苦手意識があることもあってか,研究の着想を得るようなことも特段はありませんでした。
つまり,研究「内容」と育児はあまり関連していないし,させていなかった。
ただ,私が専門としている神経心理学は,「(成人になるまでに)いったん獲得された様々な
心理機能が,脳損傷によってどのように部分的な機能低下するのか」をテーマとしており,
これはある意味,子どもの心理的発達を逆向するという視点もあります。
話は脱線しますが,たとえば,「心の理論」研究では,「サリーとアン課題」よりも難しい課題として
「失言(faux-pas)課題」があり,これは脳の部分的損傷や変性性疾患で成績が低下することが
知られています。失言を検出したり,あるいはそれを「言わない」でいることは,「心の理論」を
駆使する難しいタスクなのです。先日,テレビドラマ『謎解きはディナーのあとで』最終回を
家族で見ておりましたら,北川景子扮する宝生麗子はどうやらまだサンタクロースの実在を
信じているようだ,というシーンがあり,それを見ていた娘は「まだサンタが本当にいるって
信じてるんだ」とぽろっとつぶやいたのです。親である私たちは娘がもはやサンタを信じていない
ということを知らなかったので,これは明らかに娘の失言でありました(笑)だって信じているふりを
して,そんなこと言わずにいることができれば… こうしてクリスマスプレゼントはサンタから
届かなくなるわけです(大人になってゆくとはこういうことでしょう?)。研究内容(とか知見)は,
日常のちょっとした変化への気づきを促すところはたしかにあると思います。
もっとも,最近では,どうして娘は漢字をちゃんと覚えていないのかとか,ケアレスミスが減らない
のはなぜかとか,あれこれ考えさせられておりますが。
きっと娘にとって,親が心理学研究者であることに良いことはないでしょうね。おそらく。
うちは共働きで,しかもふたりとも同じような心理学領域の研究者です。研究「生活」と育児,
という側面で考えてみますと,ふたりそろって学会出張,というときの難易度が高いですね。
大きな学会には「託児室」が設けられるので小さいときにはお世話になることもありましたし
(「広島保育園に行こう」とかイベントにしていました),小学校を休ませて(札幌に)連れて行った
こともあります。自分の小さい頃のことを考えると,娘はだいぶ日本のあちこちに行っており,
これは,娘にとってはメリットなのかもしれません。
なんだかまったくまとまりのない話になってしまいましたが,
よろしければ娘の5歳のときのシュールな作品
「にんぎょうげき ●ひみつのはなし」
でもご覧くださいませ。
*
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